大崎梢『片耳うさぎ』

片耳うさぎ

片耳うさぎ

大邸宅を持つ蔵波一族の謎に挑む小学生の奈都と中学生のさゆりの少女二人。手がかりは伯母さんが告げた「片耳うさぎに気をつけろ」の言葉。――横溝正史風のミステリを「日常の謎」的にアプローチする物語、と思いきや、クライマックスでは単純な引っ掛けにまんまと騙され、驚いてしまった。ミステリとしては物足りない部分もあるが、後味も悪くないし、何よりも一族のドロドロとした世界を感じさせない雰囲気には好感が持てる。『配達あかずきん』などの書店員シリーズよりも高く評価したい。こういう作品をさらに期待する。