折原一『黒い森』

黒い森

黒い森

時間差で行われるミステリーツアーの目的地は、同じ富士の樹海。恋人から呼び出しを受けた男女は、それぞれの思いを胸に、ツアーに参加する。しかしどちらのツアーも参加者が次々に殺されたり減ったりしていく。最終目的地の別荘で待ち受けるものは一体何か?
女視点、男視点の二つのツアーの物語が前と後ろから描かれ、真ん中の袋とじを開けると解決編が……という凝った構成が「めざましテレビ」でも採り上げられ話題になった一作。これだけ凝ったことをすると、複雑な話になって付いていくのも大変になるのが折原作品の常だが、今回は謎自体はシンプルで解決も分かりやすいため、すっきりする。そういう意味では折原作品入門者向き。「心中、おだやかではない」というフレーズが妙な可笑しさを醸していたりもする。