「おすすめ文庫王国2007年度版」

おすすめ文庫王国2007年度版

おすすめ文庫王国2007年度版

桜庭一樹が選ぶオールタイムベスト10の記事が目立つが、他にもジャンル別ベストなど読み応え十分。執筆陣がすごいので、どこを読んでも飽きないのだ。


さて、書店員的な見地では、最後の「文庫売上ベスト100対談」が非常に興味深い。ジュンク堂池袋本店と丸善お茶の水店の文庫年間ベストを公開しているのだが、見事に全く違うランキングで、それぞれの店の特徴や「推し」が見て取れるのだ。
折角調べたので、それぞれのベスト20作品を比較してみよう。ランキングを
・両店ともベスト100に入っている
ジュンクのみに入っている
丸善のみに入っている
の三種類に分け、さらに「順位差」も比較してみた。


☆順位が「ジュンク丸善」の作品(数字はジュンクの順位−丸善の順位)

☆順位が「ジュンク丸善」の作品

ジュンクのみランクインしている作品

丸善のみランクインしている作品

  • 酒井順子『煩悩カフェ』(1)
  • 瀬尾まいこ『天国はまだ遠く』(2)
  • 重松清『流星ワゴン』(3)
  • 白石一文『一瞬の光』(6)
  • 蓮見圭一『水曜の朝、午前三時』(7)
  • 飯田雪子『夏空に、きみと見た夢』(9)
  • 安達千夏モルヒネ』(10)
  • 赤井三尋『翳りゆく夏』(12)
  • 斎藤茂太『気持ちの整理 不思議なくらい前向きになる94のヒント』(13)
  • 辻村深月『冷たい校舎の時は止まる(上)』(17)
  • 白川道『終着駅』(19)

なんといっても、丸善のみのランクイン作品に注目。ベスト3からして全然違う。これはつまり「仕掛け販売」の結果であり、POP効果だろうと思う。そして、こういう本を売ろう、売りたい、という担当者の「意気込み」が見えるリストだ。前に寄った時、『冷たい校舎の時は止まる』を何十面積みとかやっていたのを思い出す。安達千夏モルヒネ』もここが仕掛けて全国に波及したのだ(版元が作ったPOPは、この店の担当者さんが作ったもののコピーだ)。
逆に丸善さんは、伊坂幸太郎が弱い。きっと担当者さんは伊坂があまりお好きではないのだろう。


ジュンクで目立つのは「定番作品」。村上春樹が軒並み上位なのを始め、いわゆる「夏の文庫フェア」アイテムのランクインが多い。その時期に尋常じゃないほど売れるのか、年間通して売れ続けているのか。
ちなみに池袋ジュンクの田口副店長の本『書店風雲録』が46位に入っている(丸善はランク外)。


次は『煩悩カフェ』が全国の書店で仕掛けられまくるような気がする。