前田高行『アラブの大富豪』

アラブの大富豪 (新潮新書)

アラブの大富豪 (新潮新書)

原油1バレルが1ドルから4ドルになった(4倍だ!)のがかつてのオイル・ショックだったが、今や1バレル100ドルの世界である。これは原油が投機対象になったことが最大の要因だが、産油国にとっては「オイル・ブーム」である。そういえば昔からアラブのイメージといえば「砂漠と戦争と油と大富豪」だった。しかしアラブの大富豪は具体的にどんな人なのか、あまり伝わってはこない。ベールに包まれた彼らの正体に迫った作品だ。
凄い(酷いとも言う)のはUAEで、ドバイにはヤシの木を模した形のリゾート地や、世界地図を再現させようとしている何百の島からなる埋立地も開発中だ。アブダビにはルーブル美術館の分館があるが、フランスの反対運動を押し切って、大金を積んで「ルーブル」の名前と美術品を購入している。要はお金が有り余っているのだ。サウジアラビアの王子は超高層ビルを持ちながら、世界のマーケットを舞台に投資活動に余念がない。まさにバブル絶頂期の日本を思わせるが、それ以上のレベルだ。油の埋蔵量は有限だし、かつての炭鉱の町がエネルギー転換によって苦しんだように(夕張がいい例だ)、いずれ大変な事態が待ち受けているような気がするが、現時点では全く心配していないらしい。
結局のところ「羨ましいことよのう」という感想しか残らない。