吉田豪『元アイドル!』

元アイドル! (新潮文庫)

元アイドル! (新潮文庫)

かつて「アイドル」として脚光を浴びた女性タレントたち(既に引退された人も多い)に、当時の話を聞いたインタビュー集。吉田豪は「プロ・インタビュアー」という肩書きを持つ通り、相手についての事前リサーチを完璧にした上でインタビューに臨むので、思わぬエピソードを引き出したり、過激とも思える発言まで相手に喋らせてしまう。すごい才能だと思う。
本書収録のアイドルで私が最も好きだったのは、我妻佳代さん(元おニャン子)でした。
本書の内容より、特に印象的な発言を引用する。

いとうまい子
「生きてる男の人、全員変態だと思ってましたから(笑)。この業界に入ってから、やっと「あ、男の人には変態じゃない人もいるんだな」と思ったぐらいで。
(デビュー前は痴漢に「やられ放題」だった、という話から)


安原麗子
「中学のときフライデーされたんですよ。だから事務所は一応みんなを監視してるんですけど、私はその10倍ぐらい監視されてたんです(笑)」
(学校の送り迎えもピンクのマイクロバス「少女隊号」で、だったらしい)


吉井怜
吉田「とりあえず、もう「死んでもいい」とは思わないですか」
吉井「それはなくなったかもしれない。嫌なことがあっても「もう死にたくない」って思うようになったし」


岩井小百合
「その根底にあるのが、14歳のときの出来事なんですよ。アイドルってすごく華やかで楽しい反面、御飯を食べる時間もないし、誰にでも笑って握手しなきゃいけないし、一体なんだろうと思ってたときに、私と同じぐらいの年の男の子が白血病で余命何ヶ月だって、お母さんが手紙をくれたんですね。それで、「小百合さんのファンなんで、メッセージを送ってくれ」って頼まれて。そしたら、それから何ヵ月後かにお母さんから、「私たち家族も医者も自分たちの息子に笑顔を戻すことはできなかったけど、あなたのメッセージを聞いてサインを見たら、再び彼は笑って、そして天国に行った。あなたの仕事はすごい仕事だから、これからも頑張ってください」って手紙をいただいたんです……。それを読んだら、もう涙が止まらなくなって。だから、仕事を辞めようとも思わないんです。この仕事をし続けていれば必ずそういう何かに出会えるし、自分もそこから何かを貰えるし。こういうことは、他の仕事ではあんまりないかなって」


胡桃沢ひろこ
「いきなり「胡桃沢という名前は運勢が悪いので本名に戻してください! それまで僕は土下座してます!」とか言って土下座するファンの子がいたのはよく憶えてますね(笑)」

あと、緒方かな子(元・中條かな子カープ緒方孝市外野手夫人)がマンガ好きで、「ゆうきかなた」名義で同人誌を作っていたのは初めて知った。