連城三紀彦『造花の蜜』

造花の蜜

造花の蜜

素晴らしい。大傑作。ミステリファンは必読である。
個人的にはラスト(最終章全体)が余計に思えるのが実に惜しいのだが、それまでは連城マジック炸裂の大どんでん返し誘拐小説だ。前半部分で、一瞬にして事件の全体像がひっくり返る瞬間があって、私も文字通りひっくり返った。本当に一瞬、わずか一行で、である。
しかも、それだけに終わらないのが連城のすごいところで、そのあとさらに驚愕の展開が待ち受ける。なんかやるだろう、という読者の期待の遥か上を軽々と飛び越えるのだ。ややオーバーな書き方で絶賛しているが、読んでいただければ納得していただけるものと思う。
これだけ楽しませてくれただけに、最後がやや悔やまれる。いや、充分すごい展開を見せてくれるのだが。


本書の奥付は10月31日。つまり「このミス」などのランキング系ではギリギリ今年扱いなので、やや不利だと思う。この作品に関しては、実に勿体無い。もう少し早ければもっと読まれていたはずだし、一日でも後にずらしていれば「来年扱い」で充分話題になりそうだったのに。こういう作品が埋もれるのは、本当に勿体無い。是非読んでいただきたい。