井上夢人『あわせ鏡に飛び込んで』

あわせ鏡に飛び込んで (講談社文庫)

あわせ鏡に飛び込んで (講談社文庫)

井上夢人の短編集。ほとんどが1990年代前半に発表された作品で、とりわけ表題作は、ミステリとジグソーパズルがセットになった企画ものでのみ発表されていた幻の作品だ(ちなみに私、その本というかパズルを当時買って読んだ。パズルも作ったのだ)。
さすがにやや古い作品もあるが(人口知能をテーマにした「ジェイとアイとJI」が好例。パソコンネタは10年前でもめちゃくちゃ古いからね)、ミステリとしてはどれも水準作で、非常に楽しめた。「奇妙な味」短編が多いか。「さよならの転送」とか大好きだなあ(これも留守電がテープ録音されていたりする)。ただ、こういうタイプの小説が現在でも書かれ、読まれているかどうかがよく分からないので、世代によっては薦め難い気もする。