貫井徳郎『乱反射』

乱反射

乱反射

傑作。
物語全体のちょうど中間地点で起こる事件(事故)を巡る話。この事件が実に痛ましく、気が滅入るようなもので、なんとも言えない気持ちになる。
登場人物たちは全員、その事件に何らかの形で関わっていることになる。
直接手を下した人は一人もいないが、全員がその「死」の遠因を作っている。
それを構成するのは、ちょっとした「モラルの欠如」だ。
ほんの些細な利己主義の積み重ねが、悲劇を生んだ。
そして事件の責を問われても否定するのだ。
著者は圧倒的なリーダビリティとリアリティで、現代社会の歪みを巧みに描き出すことに成功している。
今年最高の「イヤミス」だと思う。
必読。