朝倉かすみ『玩具の言い分』

玩具の言い分

玩具の言い分

『田村はまだか』以降いくつか読んできたものの、今ひとつ波長が合わなかった朝倉かすみ作品だが、これは大傑作だと断言しよう。
今年はもうこれ以上の恋愛小説は登場しない。と思う。
男である私ですら何故か主人公の女性たちに共感してしまう。みんななんとなく不器用な恋愛ばかりしているのだ。中でも「小包どろぼう」の茂美は、43歳にして処女、という設定だが、心理描写が痒いところを突いて来るほどリアルである。
アラサー、アラフォーの女性なら、本書の誰かに、大なり小なり共感を覚えると思う。逆に、若い人には理解できないかも知れない。世代を選ぶ小説だが、傑作であることだけは間違いない。