藍霄『錯誤配置』

錯誤配置 アジア本格リーグ1

錯誤配置 アジア本格リーグ1

島田荘司がアジアの傑作ミステリを日本に紹介する「アジア本格リーグ」。全6作品が予定されているが、そのうちの一つ。今、日本のミステリ作品の紹介が活発で、先ごろ「島田荘司賞」も発表されるほど、本格ミステリ市場として「熱い」台湾からの代表作品。
冒頭から、いかにも島田荘司的な話で、かなり影響を受けていることが伺える。突然周囲の人々から認識されなくなった男の不思議体験と、密室不可能犯罪。建物の詳細図が何枚も挿入されて、期待値が上がる。
真相は一見すると地味だが、本格ミステリ独特のルールからの逸脱を図っていて、野心的な作品とも言える。タイトルの意味も真相で明らかになる。読了後、徐々に印象が強くなる不思議な作品だ。


作中から、日本のミステリがいかに一般に浸透しているかが伺える文章を引用する。

いわく「ミステリー小説において人間が描けているかどうかなんて、そんなことはどうでもいい」と。
(15ページ)

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「作品における猟奇性と怪奇幻想の度合いからして、まだ現役で活躍しているミステリー作家のなかからそいつを挙げるとすると……よしっ、判った。俺が真相をいい当ててみようか……そりゃあ、きっと日本のミステリー作家の島田荘司綾辻行人だな。犯人はきっと二人のいずれかに違いないっ!」
(151ページ)