永江朗『本の現場』

本の現場―本はどう生まれ、だれに読まれているか

本の現場―本はどう生まれ、だれに読まれているか

販売価格は1800円だが、「非再販」を大々的に謳ったことて業界内では話題になった。もっとも、実際に安くして売ってる店はほとんどないだろう。
出版業界の現状と問題点と期待をざっとまとめた本。
なかなか的を突いている指摘も多い。いくつか引用。

出版社にとっても書店にとっても、本は貨幣と同じだ。私はこれを“本のニセ金化”と呼ぶ。(24ページ)
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目録を作らない新書は、遅かれ早かれダメになるだろう、と田口さん(ジュンク堂池袋本店副店長)は予言する。なぜなら、目録を作らないということは既刊本を大事にしないということであり、ロングセラーを育てる気がないということである。(134ページ)
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05年のベストセラー1位は『頭がいい人、悪い人の話し方』だった。06年の1位は『国家の品格』だった。07年の1位は『女性の品格』である。なんと3年連続で新書が首位だ。しかもこの3冊がそろいもそろってクズみたいな内容である。(136〜137ページ)
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ところが、大多数の書店員と、こうしたカリスマ書店員との間に、一種の乖離が生じてきたようにも見える。(中略)「本屋大賞受賞作」というPOPをつけて本を売る書店員が、自分もその書店員のひとりだという当事者意識がないまま、本屋大賞芥川賞直木賞と同じような賞のひとつとして扱ってしまっているのかも知れない。(158ページ)

最後の本屋大賞の話は鋭い指摘だと思う。