「新文化」丸善・小城社長インタビューより。

出版業界紙新文化」の1月7日付け1面に、丸善の小城社長へのインタビューが掲載されている。これが、非常に刺激的かつ面白い内容だった。
自分が「こういう店を作っていきたい」とぼんやりとながらも考えていたような話ばかりだった。

「これは持論ですが、書店サイドの提案力の低さが、本屋をつまらなくしてしまっています。本筋として、もっとマーケティングに努め、お客さまに対する提案力を高めていかなければなりません」
「売上げを上げるという意味では『本屋を面白くする』、効率を上げるという意味では『返品率を下げる』。大きく分けてこの二つがテーマです。」
「ドイツで返品率5%の書店をみてきたのですが、書店員の数が日本に比べてかなり少ないことに気付きました。売場に並べたものを返す必要がなく、自分たちが注文した本しかこないわけですから、並べることにも迷いがありません。だから個性が出るんです。もう一つ気付いたのは、1000坪もある売場にPOPがたった三枚しかありませんでした。理由を考えて私なりに見つけた回答は、店にあること自体がお薦めになっているということです」
「万人に受けようとはせずに、もっと店によって好き嫌いがあってもいいと思います。松丸本舗を好きな人もいますが、嫌いな人もいます、それでいいじゃないですか。もっと個性を出せれば返品率も下がってきます。」
「小書店が淘汰されているのは、大型書店の部分集合だったからです。そうではなくて、まったく違ったエッジをきかせるマーケティングに変えれば、生き残れるはずです。つまり、個店ごとに異なるお客様の要望に叶う本を置くのです。他の小売はそうしているのですから」
「本という媒体は今、ケータイやゲームなどの他の媒体に負けているんです。それはなぜか。業界全体がマーケティング努力を怠っているからです。活字は読まれているんですよ、他の媒体で。ケータイやゲームの業界には、マーケティングの神様みたいな方が多いですから。出版業界全体がこのままでは負け戦になるという意識をもたないといけません」

中小規模の店舗では在庫量で大書店に勝てるわけがないので、なら「個性」で勝負してみたい、と思う次第である。