クリス・アンダーソン『フリー』

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

無料で提供するサービスを元に、ワンランク上のサービスから収益を得たり、別の手段で儲けたりするマーケティング概念を〈フリーミアム〉という単語で統括し、提唱している。今後のビジネスモデルには欠かせない概念だと思う。
最近の〈フリーミアム〉の成功例として、いきなりプロローグの1ページ目から紹介されているのが、モンティ・パイソンのケースだ。かつてのコント映像が第三者によってYouTubeに勝手にアップロードされ続けていたが、ついに本家が反撃に出たのだ。

この三年のあいだ、君たちユーチューブのユーザーは、われわれの作品を盗んでは何万本もの映像をユーチューブに投稿してきた。だが、今から立場は逆転する。われわれが主導権をにぎるときがきたのだ。
われわれは君たちが誰でどこに住んでいるか知っている。口にするのも恐ろしい方法で君たちを追跡することもできる。だが、われわれはとんでもなくいい人間なので、もっといい仕返しの方法を思いついた。それは、われわれ自身がユーチューブ上にモンティ・パイソンのチャンネルを立ち上げることだ。
もはや君たちが投稿してきた質の悪い映像は用なしだ。われわれが本物を届ける。そう、金庫室から持ち出した高画質の映像だ。さらに、人気の高い過去の映像だけでなく、新たに高画質にした映像も公開しよう。さらにさらに、それらはまったくの無料だ。どうだ!
しかし、われわれは見返りを要求する。
君たちの無意味でくだらないコメントはいらない。その代わりに、リンクページからわれわれの映画やテレビ作品を買ってほしい。そうすることで、この三年間、盗まれつづけてきたわれわれの苦痛や嫌悪感をやわらげてほしいのだ。

この結果、DVDはアマゾンの映画・テレビ番組ベストセラー2位。売上は230倍になった。「フリー」のサービスを利用して、大きな収益を得たのだ。もちろん、この「脅し」に見える文章は彼ら一流のジョークである(「口にするのも恐ろしい方法」という言い回しが彼ららしい)。なお、この原文は今でも読むことができる。
Monty Python - YouTube
(左下の「プロフィール」の部分)
もちろん、これはほんの一例にすぎない。本書では数多くの〈フリーミアム〉の成功例が紹介され、様々な可能性を教えてくれる。新たなビジネスを興したいと思っている人は必読だと思う。