『こんなに違う!世界の国語教科書』『編集者の仕事』

こんなに違う!世界の国語教科書 (メディアファクトリー新書)

こんなに違う!世界の国語教科書 (メディアファクトリー新書)

メディアファクトリー新書創刊ラインアップの一冊。軽い気持ちで手にとって読んでみたら、意外と奥が深くて面白かった。
教科書の違いだけでなく、国語教育の概念の違いまで触れられており、興味深い。
民族叙事詩「カレワラ」を何度も読ませるフィンランド、小学4年でトルストイの原文を読ませるロシア、日本ではほとんど忘れ去られた作家・木山捷平の作品を載せる中国が特に面白かった。



編集者の仕事―本の魂は細部に宿る (新潮新書)

編集者の仕事―本の魂は細部に宿る (新潮新書)

新潮社で長年編集者を勤めた著者が「編集作業」の奥深さを紹介した一冊。
当たり前のことだが、作家の小説を読んで間違いを直す、だけが編集ではないことがよく分かる。版形はどうするか、活字はどれを使うか、紙の質は、色は、表紙、帯、スピン(しおり紐)は……編集者の仕事は細部にまで及ぶ。
こういうのを読むと、かつてオフ会の席上で津原泰水さんに「日本の製本技術は世界一だ」と言われたことを思い出す。
電子書籍の話ばかりが盛り上がる昨今だが、活字の本でなければならないこと、活字でなければ出来ないことがあるような気がする。
最も印象的な一文を引用する。

まことに書きにくい話なのですが、触れざるをえないことがあります。校正は収益に直結しない仕事のため、そこにあまり経費をかけない出版社が少なくありません。事情はわかりますが、出版文化を考えると、これはいささか残念なことです。
(90ページ)

自分が携わった本の話だけでなく、出版文化全体を見据えた発言として共感した。