キング・オブ・トラウマ映画化表紙は、坂口安吾『不連続殺人事件』である

昔も今も、映画化やドラマ化された原作小説は連動してよく売れる。
そしてもちろん、出版社もそれを大いに宣伝し、表紙やオビを大きく変えてくる。
よく知られているように、メディアミックス戦略は角川春樹と角川文庫が発明した宣伝手法であり、そのため昔から角川が戦略的に長けているが、現在では他の出版社も上手い。


最近のメディア化文庫での流行りは、「全オビ」と呼ばれるものだ。
オビの大きさがどんどん大きくなり、現在では表紙カバーとほぼ同じ大きさになってきたものが多い。しかしよく見てみると、表紙よりほんのわずか、数ミリレベルで小さいサイズになっていて、それが「全オビ」なのだ。あくまでも表紙ではなく、オビという扱いだ。表紙を変えるのではなく、オビを映画のスチール写真や宣材写真に変えることによって、その全オビを表紙の上に巻いて映画化・ドラマ化作品であることをアピールする。映画・ドラマが終われば、その全オビを外せば、通常の表紙の文庫に戻るというわけだ。なかなか上手いこと考えたものだと思う。
全オビ化の最初の作品はなんだったろうか? 吉田修一の『悪人』だと記憶しているのだが、違いますかね?


ところで昔は、映画化・ドラマ化では文庫の表紙そのものを変えるのが多かった。なので、終わったらその文庫がちょっと古臭く思えたものである。もちろん、大抵の場合はまた通常のカバーに戻すわけだが、時々、メディア化表紙のままずっと流通している文庫があったりして、それはそれで味わい深い感じになっていた。


このフリから私が紹介したい作品は、私くらい以上の世代、40代以上のミステリファンならみんな、ピンと来るかも知れない。
坂口安吾『不連続殺人事件』である。

不連続殺人事件 (角川文庫)

不連続殺人事件 (角川文庫)


現在は表紙が変わってしまったので、今リンクしても面白みはない。が、かつて、『不連続殺人事件』は長い間、映画化表紙がそのまま使われていた。映画は1977年公開だが、少なくともそこから20年以上はあの表紙だったはずだ。30年近かったかな?
どんな表紙だったかをここでお見せしたいのだが、写真データをネットから取り込むのは問題あるかも知れないので、表紙をアップされているブログにリンクする。


(リンク先の下の方に角川文庫版の表紙の画像あり→)映画『不連続殺人事件』 | 圏外の日乘


仰向けになっているのは、諸井看護婦役の宮下順子胸がはだけておっぱいがモロ見え、乳房もバッチリ見えている。これが長らく表紙になっていたのだ。『不連続殺人事件』は旧版の「東西ミステリーベスト100」の国内編4位だったので、ミステリを読み始めた少年少女はみんな、これを読みたいのに、買いたくても買えない、レジに持っていくのが恥ずかしい思いをしてきたもので、ある意味トラウマになったはずだ。


角川文庫といえば、昔の時をかける少女原田知世表紙、ぼくらの七日間戦争宮沢りえ表紙も覚えている人は多いはずだ。
個人的には、松田優作の表紙だった『乱れからくり』も懐かしい。


(リンク先に角川文庫版『乱れからくり』の表紙画像あり→)乱れからくり 泡坂妻夫 角川文庫 角川書店 ( 昆虫 ) - 墓穴を掘って何を埋める? - Yahoo!ブログ


海外ものでは、ハヤカワ文庫がわりと映画化・ドラマ化表紙が多かった。よく覚えているのはデューン砂の惑星シリーズ。
個人的には、黒衣の花嫁の十朱幸代の表紙をよく覚えている。


というところで、この話は特にオチもなく、ここでおしまい。
皆さんの思い出の映画化・ドラマ化表紙はなんだろうか?