未来の東野圭吾ファンが必死になって探す(かも知れない)入手困難本は、『禁断の魔術』(ソフトカバー版)である
東野圭吾の人気シリーズのひとつ「ガリレオ」シリーズは、最初はいたって地味に始まったと思う。
第一弾の『探偵ガリレオ』がハードカバー単行本として刊行されたのは1998年。今ネットで調べてみると、東野圭吾の本格ブレイクになった『秘密』が出る直前で、その翌年には『白夜行』が出ており、大きな流れが生まれていく過程の狭間でひっそり出ている。私は当時から東野作品を結構読んでいたので、『探偵ガリレオ』も『秘密』も『白夜行』も、刊行されてすぐに読んでいる。この当時の記録をネット上に残してないので記憶があやふやだが、『探偵ガリレオ』については、読者が知りえない科学知識が出てくるのでアンフェアギリギリじゃないか、と思いながらも、結構楽しく読んだ覚えがある。
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第二弾の『予知夢』が2000年、そしてあの、シリーズ初長編にして直木賞受賞作となり、またミステリ作家やファンの間で大激論になった問題作でもある『容疑者Xの献身』が2005年だ。この当時の感想は私もこのブログで残している。
2005-09-06 - 政宗九の視点
余談だが、『容疑者Xの献身』の初版は、カバーのコーティングが特殊で、やたらと指紋がベタベタ付いてしまっていた。なので、書店で売る際はシュリンクしていたものである。同様の指摘をたくさん受けたからか、重版分からコーティングが変わって指紋が付きにくくなった。(これもまた懐かしい話ですね)
で、福山雅治主演のドラマ「ガリレオ」が始まるのは2007年で、そこから「ガリレオ」シリーズの大ブームが生まれていくのはご存知の通り。
2008年には短編集『ガリレオの苦悩』と長編『聖女の救済』が同時発売されるというお祭り状態もあり、第三長編『真夏の方程式』が2011年、2012年には短編集『虚像の道化師』と『禁断の魔術』がほとんど間を措かずに連続で刊行されて、これもお祭りになったものである。
さて、今回の記事の本題は、この『虚像の道化師』と『禁断の魔術』について。
2作品とも、今年(2015年)文庫化されたが、正確には元版(ソフトカバー版)と文庫版は内容が違う。
文庫の『虚像の道化師』は、ソフトカバー版の『虚像の道化師』収録の4作品と、『禁断の魔術』から「猛射つ(うつ)」を除いた3作品、計7作品が収録されている。
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そして文庫版『禁断の魔術』は、その短編「猛射つ(うつ)」を元に長編化した作品なのである。基本の事件やトリックは同じだが、読み比べると随分と印象が変わると思う。登場人物の背景などがより詳しく描かれている。
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ただ、これによって、短編「猛射つ(うつ)」は文庫に収録されることはなくなった。恐らく、今後もされないと思う。ここからふと連想するのが、古本者の心理である。将来、東野圭吾の全作品をコンプリートしようと思った時、まあ大概の作品は文庫で集められるだろうけれど、この「猛射つ(うつ)」だけは文庫では読めない。読みたければソフトカバー版の『禁断の魔術』を探さなければならないのだ。ソフトカバー版『禁断の魔術』は将来の東野ファンにとって入手困難本=「キキメ」になるだろう。
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