木村元彦『すべての「笑い」はドキュメンタリーである』

どうも、政宗です。
今年の正月に「今年こそブログ更新を頑張ります」とか書いておきながら、半年間何も書かなかったという体たらく。申し訳ありません。できれば毎日更新したい気持ちでおりますが、まあ、ぼちぼちマイペースでやっていきます。


そんなわけで、今日は最近読んだ本から、こちらをご紹介します。

すべての「笑い」はドキュメンタリーである

すべての「笑い」はドキュメンタリーである


80年代に関西で放送していた人気番組「突然ガバチョ!」。スタジオ内で笑った観客が筋肉ムキムキの男たちによって強制的に退場させられる「TVにらめっこ」などで人気を博した番組だ(そして実はこのコーナーこそ、年末恒例の「笑ってはいけない」シリーズの元ネタでもある)。この番組ではラストに生放送のパート「突然生放送」があった。生放送という台本のないドラマを面白がったわけだ。このコーナーの企画会議でなかなかアイデアが出てこなかった時、たまたま会社見学にきていた制作会社の新人がいきなり面白いネタを提案し、すぐに採用された。それが倉本美津留のTV初企画だった。やがて倉本はADから放送作家に転向し、これまた関西のお化け番組だった「夜はクネクネ」(原田伸郎角淳一が街をぶらぶらして一般人にインタビューして歩くだけの番組)に携わった。倉本美津留の企画の面白さこそ、ドキュメンタリー性にあった。


EXテレビ」では上岡龍太郎島田紳助がやっていた火曜日を担当。視聴率をテーマにした回では、「視聴率調査機のある2600世帯だけにおくる限定番組」と銘打ち、放送後にNHK教育の「砂嵐」を見てもらって視聴率を出そう、という実験を行い、見事に「砂嵐」に対して2%の視聴率を叩き出した。局の上司からもビデオリサーチからも怒られた企画だったが、日本民間放送連盟賞のテレビ娯楽部門最優秀賞を受賞した。


番組中に上岡龍太郎が激怒してスタジオを去っても、その展開とその後を全部見せることによって企画として成立させた。番組制作に携わるスタッフを不要だと思う人間から一人ずつ帰らせていって、放送事故になったら負け、という「テレビスタッフ山崩し」など、ドキュメンタリーをそのままバラエティに昇華させたのが倉本美津留の真骨頂であった。現在の「漫勉」も倉本と浦沢直樹との企画である。


本書『すべての「笑い」はドキュメンタリーである』は、倉本美津留というTV界の天才の業績を追ったノンフィクションだ。


こういう内容の本を書いたのが、あの『オシムの言葉』や、最近話題の『徳は孤ならず』の著者、木村元彦さんだということを信じてくれる人は、一体どのくらいいるのだろう。しかも『徳は孤ならず』とほぼ同時期の出版である。


そういえば、『徳は孤ならず』の主人公、今西和男さんと、『すべての「笑い」はドキュメンタリーである』の主人公、倉本美津留さんには、共通点がひとつある。二人とも、広島県出身ということだ。


徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男

徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男