「TUBE(チューブ)」(2003年韓国作品)

ソウルの中枢に張り巡らされた地下鉄網。ソウル市長が視察に乗車したその地下鉄を、テロリスト、ギテク(パク・サンミン)が乗っ取った。目的は前総理への復讐。ギテクらはかつて国の秘密諜報部員だったが、前総理によって追放され、かつての仲間らが次々に消されていたのだ。停車すると爆発する地下鉄、数多くの人質。チャン刑事(キム・ソックン)はこの列車内に単身で乗り込んだ。彼はかつてギテクらとの銃撃戦で恋人を失っており、個人的にも恨みがあるのだ。チャン刑事の哀愁を帯びた姿に恋心を寄せるようになった女スリ、インギョン(ペ・ドゥナ)もこの列車内にいた。かくして、地下を高速で走る列車内で息詰まる攻防が始まった。
いや、結構面白かったよ。監督ペク・ウナクは「シュリ」の脚色と助監督だった人でこれが初監督作品。だから随所に「シュリ」風な味付けが見られる。ほぼ全編がサスペンスアクションで、観ている方も疲れる。後半ギテクが死んでからも、さらに危機的状況が続き、どうするの、どこで落とすの、みたいな手に汗握る緊迫感が楽しめた。おかけで続けて観ようと思っていた「オールド・ボーイ」も疲れて観るのを止めたくらい。
もちろん不満点もあって、空港と地下トンネルの二回ある大掛かりな銃撃戦など「玉数撃ちゃあいい、ってもんじゃないだろ」と思う。ご都合主義的な展開も多くて、何よりもキム・ソックンが超人過ぎ! バイクから疾走する地下鉄に飛び移るなんて無理だよ絶対。ギテクがテロ活動する動機も、やってることが大きい割には説得力に欠ける気がするし、その辺りの背景がちょっと見え難い。
キム・ソックンもいいが、パク・サンミンの冷徹ぶりが炸裂。それとやっぱりペ・ドゥナだ。私は「ペ・ドゥナの泣き顔」に萌えたね。ネタバレになるので詳しく書かないが、ラスト近く、キム・ソックンと離れそうになる場面で動揺しながら泣き叫ぶシーンには萌えまくり。公式サイトなどでペ・ドゥナを見て「お、可愛いじゃん」と思った人は絶対観た方がいい。「子猫をお願い」も観たくなったぞ。
脇役陣も、警察署長とか捜査一班班長とか前総理とか図体のデカいスリの兄ちゃんとか、みんな「ほかの映画で観た事がある」人ばかり。彼女と喧嘩して乗っ取られた車両から離れ、チャン刑事に協力するスケボーを持った兄ちゃんが梶原善さんに見えた(これは関係ないか)。他に脇役で特筆すべきは、新妻が事件車両に乗り合わせてしまった地下鉄統制室職員役のチョン・ジュン。「アタック・ザ・ガス・ステーション!」では気弱なバイト、「リベラ・メ」では先輩風を吹かせる若手消防官と、やや「お坊ちゃん」的な役回りが多かった彼だったが、こんなに大きくなっているとは。歳とったねえ。