古川日出男『LOVE』

LOVE

LOVE

東京の品川、目黒、五反田を舞台に、老若男女そして「猫」たちが動き回り交差する連作集。いや、形式こそ連作中編集になっていはいるが、全体を俯瞰して意味を持つような小説でもあるし、細かな事象一つ一つをつぶさに見ていくような小説でもある。基本的に別の物語だが、微妙に絡んだりもする。かなり実験的なレトリックと文章なので、読んでいてもどういう物語なのか理解するのは難しい。むしろ、文章に浸り続け、酔っていればいい小説なのだろうと思う。舞台になっている場所がかなり詳細に書かれていたりもするので、作中で登場する場所に行ってみたくなるような小説でもある。品川という土地に激しく興味を覚えた。
(この感想はゲラを読んでのものです)