「親切なクムジャさん」(2005年韓国作品)

http://www.kumuja-san.jp/
イ・クムジャ(イ・ヨンエ)は1991年に、児童を誘拐・殺害したことを自首し、逮捕された。当時20歳で清純に見える美人だったクムジャの姿にマスコミが殺到し、大騒ぎになった。服役中の彼女は真面目に勤め、他の服役囚に数々の救いの手を差し出したことから、いつしか「親切なクムジャさん」と呼ばれるほどの模範囚となった。そして出所の日が来た。彼女をバックアップしていた神父の出迎えを受けたが、彼から差し出された豆腐*1をその場に捨てた。「余計なお世話です」――実は彼女は無実の罪で服役していたのだ。18歳にして妊娠したクムジャが相談した相手、教育実習の先生・ペク(チェ・ミンシク)が真犯人で、彼はその罪を被らなければ産まれたばかりのクムジャの娘を殺すと脅したからだった。クムジャの服役中にペクは彼女の娘をオーストラリアに養子に追いやっていた。出所した瞬間、クムジャは復讐の鬼と化した。かつて助けてあげた服役囚たちを訪問し、復讐の準備を着々と進めていった。オーストラリアから娘も連れ帰り、そしてついにペクの姿を捉えた……。


復讐者に憐れみを」「オールド・ボーイ」に続くパク・チャヌク監督の「復讐三部作」のラスト。とにかくイ・ヨンエなのだ。イ・ヨンエがそれまでのイメージを払拭させた作品は、見応え充分だ。過去二作と決定的に違うのは、「復讐を果たした後に、復讐者の心は満たされるのか」ということをクローズアップさせたところか。前半は「いったいこの人たち(服役囚)をどう使うのか」とわくわくしていたが、あまり具体的な関わりがなかったのがよく分からない。その代わりに利用するのが……ここはネタバレになるので書かないが、クムジャ自身だけでなく、関係者たちの復讐心をも人為的に作り出すのだ。凄いというよりは、いやーな感じ。もう一つ重要なのが娘との絆で、ここも巧いなあと思うところと、よく分からない部分が混在している。ファンタジーめいたシーンが点在するのも、ちょっと興ざめ。全体的にややアンバランスな作品だと思ったが、最後まで飽きることはないし、個人的には面白かった。後味の悪さは三部作ではこれが一番薄いかな。


18歳の女子高生(制服!)から34歳の出所後のやつれ顔までを見事に演じきれたのも、イ・ヨンエだからこそ出来たことだろう。チェ・ミンシクはあまり見せ所はないかな。過去二作品に出た俳優たちがカメオ出演しているのも見所の一つ。でもソン・ガンホとシン・ハギュンはどういう意味合いがあったのか*2?ユ・ジテは美味しいところを持っていっている。あと気付かなかったが、カン・ヘジョンがレポーター役で出てたらしい。

*1:韓国では、再び犯罪に手を染めない白い心でいられるよう、出所直後に豆腐を食べる習慣がある

*2:ただ襲っただけ?