太田忠司『予告探偵 西郷家の謎』

予告探偵―西郷家の謎 (C・NOVELS)

予告探偵―西郷家の謎 (C・NOVELS)

1950年、戦争の記憶がまだ新しい頃、由緒ある名家・西郷家――屋敷を生い茂る木々の名から「ユーカリ荘」とも呼ばれる――に、“予告探偵”摩神尊からの予告状が届いた。「すべての事件の謎は我が解く」――文筆業を営む私、木塚東吾は「友人」摩神にそそのかされて西郷家に向かった。クセのある人々が住む屋敷で、やがて起こる連続殺人。摩神は「予告」通りに謎を解くことが出来るのか?
かつての館ものミステリ(綾辻よりずっと以前の古典作品系)を思わせる舞台設定と意識的にB級なストーリー展開は、やや軽く感じられるかも知れない。しかし、結末で読者はもっと脱力することになる。えー、そういう話だったの? みたいな。はっきり言って、バカミスである。それもかなり確信犯だ。クライマックスで、説明不足なまま放置している描写が何箇所かあって(例えば「使用人たちには絶対、××は不可能だ」など)、違和感を感じながらラストに来て、あーそういうことだったかと腑に落ちる。いや、腑には落ちるのだが、なんか納得できないような、いいように丸め込まれているような、微妙な感じだ。どうしても奥歯に物が挟まったような言い方しか出来ないのだが、こういうのは受け入れられる人と、絶対に許せない人とはっきり分かれるだろう。私はどっちかと言えば前者だからいいけど。