法月綸太郎『怪盗グリフィン、絶体絶命』
- 作者: 法月綸太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/03/17
- メディア: 単行本
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法月綸太郎が子供たちに提供した物語は、最初から最後までドキドキ、ハラハラさせられる軽ハードボイルド小説だった。法月らしくない作風だが、これがとても面白い。グリフィンの身に次から次へと降りかかるピンチ、そしてどんでん返し。グリフィンも他の人たちも、事件の裏の裏の、そのまた裏をかいていくので、一体どれが真実なのか、誰を信用していいのか分からない。だがこのくらいの混乱が、子供たちを興奮させるに違いないのだ。読書の愉しみを、ドキドキ感を味わってもらいたい、そんな法月の子供たちへの想いが詰め込まれているようだ。こういう小説が読める少年少女は、幸せである。挿絵のタッチも素晴らしいし、使われ方も効果的だ(特に78〜79ページの「割り込み方」は絶妙)。逆に、本作で法月綸太郎のファンになった子供が将来大きくなって『頼子のために』とか『ふたたび赤い悪夢』を読んだら、そのギャップに戸惑うかも知れない。私たち世代の「乱歩体験」に近いものを感じるかも。