黒田研二『カンニング少女』

カンニング少女

カンニング少女

玲美の姉・芙美子は、東大と並び称される難関大・馳田学院に進学していたが、交通事故で世を去ってしまった。だが玲美はこれが単純な事故とは思っていなかった。姉が残していた日記には、憧れだったゼミの先生への想いと美人の助手への嫉妬心が書かれていたのだ。姉の死の真相を見つけたい、その一心から、玲美は馳田学院への進学を決めた。学年でも成績が下の玲美には到底無理な話だ。しかも担任からは「次のテストで学年二十位以内にならなければ馳田への受験は認めない」とまで言われてしまった。彼女は藁をもすがる思いで、学年一の優等生・愛香やクラスメートの杜夫、隼人たちに相談した。そして――玲美のための、大カンニング作戦が繰り広げられようとしていた……。
トリッキーでマニアックなミステリを書いてきた黒田研二だが、前作『結婚なんてしたくない』あたりから一般受けする作品へとシフトチェンジを図っているようで、本作はより一層、一般向けを意識した小説に仕上がっている。カンニングを中心にした学生たちと先生との対決をメインにしながら、「姉の死の謎」というミステリ的要素を絡め、どちらの部分でも読者を驚かせることに成功している。そしてラスト、そういう落とし方をするとは全く予想していなかったので激しく驚くと同時に、ちょっと感動してしまった。プロットが絶妙に決まった結末になっているのだ。カンニングの手口の一部に、五十嵐貴久『Fake』で使われていたネタに似ていたのは気になったが、アレンジが違うので些細な問題だろう。ただし、その結末に向かうのがやや性急な点が少し残念なところだ。
あと本筋とは無関係だが、高校の先生たちの名前の元ネタが、元・モーニング娘。メンバーだったことに思わず吹いてしまった。みんな「元」で現行メンバーの名前が使われていないところに、作者の(別の意味での)思いが込められているような気がした。ああ、もう本体はどうでもいいと思っているのですね、くろけんさん……。