東川篤哉『殺意は必ず三度ある』

殺意は必ず三度ある (ジョイ・ノベルス)

殺意は必ず三度ある (ジョイ・ノベルス)

鯉ヶ窪学園の野球部は超弱小、夏なんてあっという間に終わってしまう。だが今年は試合とは別のところで異変が起こった。ある日、グラウンドのベースが盗まれるという事件が発生したのだ。探偵部の三馬鹿トリオが謎に挑むが、それは序章に過ぎなかった。練習試合が雑木林に囲まれた相手高校のグラウンドで行われたが、監督が最後まで現れない。なんと監督は、バックスクリーンで死んでいたのだ。さらに死体の近くにグローブとボール、そして盗まれたベースが置かれていた。さらに続く殺人……ベース盗難との関連は? これは「野球見立て殺人」なのか?
『学ばない探偵たちの学園』のシリーズにあたるが、いつもの東川節が炸裂。最初から緩くて萎えるギャグの嵐で、読者を和ませてくれる。しかし本格部分はしっかりしているので、文体に気を取られていると、重要な伏線を見逃してしまったりして気が抜けないのだ。特にメイントリックは視覚的にも明快かつ巧妙なもので、なるほどと唸らされた。探偵部三人のマニアックでオタクなキャラクターも面白い。ケレン味がないので、読み終わると地味な印象が残ってしまうのが残念だが、この作風では仕方のないところだろう。