乙一『銃とチョコレート』
- 作者: 乙一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/05/31
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 76回
- この商品を含むブログ (319件) を見る
乙一が、読者を子どもに想定して小説を書くとこんな感じになるのか、ということが良く分かる小説だ。少年の目から見た「怪盗と探偵」の対決、という単純な図式で片付けてもいいのに、そんな甘えたようなことをしないのが乙一。主人公の設定も「らしい」ところだし、人は得てしてみんな「裏の顔」を持っているものだという、大人になると誰もが実感するけど、子どもに教えるにはやや躊躇われる真理も堂々と描いてしまう。クライマックスにおける邪悪ぶり、しかし最後に不思議と残る清々しいような余韻。巧いなあ。騙りの天才は児童文学を書かせてもやっぱり天才だったのだ。