小路幸也『東京バンドワゴン』

東京バンドワゴン (1)

東京バンドワゴン (1)

「東亰バンドワゴン」*1はカフェが併設された古本屋である。頑固だが気風のいい勘一、その息子でロックンローラーの我南人(がなと)、我南人で未婚の母藍子、長男の紺、次男だが実は愛人の息子・青など、一癖も二癖もある4世代の大家族だ。そこで沸き起こる様々なトラブル、そして、「朝に出現して夜には消える百科事典」などのちょっとした謎。一年の移り変わりと共に展開されるホームドラマ
これはいい作品だ。ノスタルジーを感じるのは、著者本人も意識しているように、昭和のホームドラマ(「寺内貫太郎一家」など)を想起させるからだろう。そしてこういう大家族に、誰もが憧れていたはずである。亡くなった勘一の妻・サチの視点で語られていて、彼女が家族全体を優しく包んでいる空気が、もうずるいほど巧い。謎とその解明部分もよく出来ているものばかりだ(「百科事典の謎」が一番いいかな)。どんな揉め事も「LOVEだねぇ」の一言で強引に解決させる我南人には、ずっと内田裕也を思い浮かべながら読んでいた(実際は他に複数のモデルがイメージされているそうだ)。続編を激しく希望する。しぇけなべいべー。

*1:「亰」は京の真ん中に「日」が入る方の字