朱川湊人『赤々煉恋』

赤々煉恋

赤々煉恋

「思い出話」をベースにノスタルジックなホラーを中心に発表してきた著者。本作は現代物がメインだが、やっぱりどことなく懐かしさを感じさせるものばかり。プロットに捻りがほとんどなくて、「どこかで読んだような感じ」を思わせるからなのかも知れない。一見歪んでいるが、当事者にとっては実に真剣な性愛をテーマにしており、読み進むにつれてどんどんのめり込んで行き、最後には物悲しくなる短編集だ。小説の内容に触れようとするとすぐにネタバレになりそうなので、粗筋紹介は見送っておきたい。個人的には「私はフランセス」と「いつか、静かの海に」が特に良かった。