道尾秀介『シャドウ』

シャドウ (ミステリ・フロンティア)

シャドウ (ミステリ・フロンティア)

鳳介のお母さんが亡くなってから、不可解な事件が相次いだ。鳳介の幼馴染み・亜紀の母親が飛び降り自殺をし、続いて亜紀も事故に遭った。そして鳳介が知る驚愕の事実――鳳介と父・洋一郎の周りで何が起こっているのか? 一体、誰の話が真実なのか?
注目の作家・道尾秀介の最新作。視点が複雑に入れ替わり、物語の様相がどんどん変わる。後半、ありがちなネタを使ってきているので、どうとでも転がせるような気もするのだが、構成の巧さと伏線の巧みさが素晴らしい。あの場面にはこんな意味があったのか、という驚きが畳み掛けるようにやって来るので、読んでいて気持ちいい。リーダビリティも高く、ミステリとしても傑作と呼べるレベルに達していると思う。個人的には『骸の爪』の方が好みだが、こっちを高く評する人も多いだろう。『骸の爪』『シャドウ』の二作を同じ年に発表できる道尾秀介の実力は計り知れない。この作家は必ず大きく化ける。今のうちに読んでおいて欲しい。