吉田武『はやぶさ 不死身の探査機と宇宙研の物語』

はやぶさ―不死身の探査機と宇宙研の物語 (幻冬舎新書)

はやぶさ―不死身の探査機と宇宙研の物語 (幻冬舎新書)

はやぶさ」とは、小惑星イトカワ」の探査のために打ち上げられた探査機である。数多くのトラブルを乗り越えながら、非常に小さな小惑星イトカワに着陸し、そのサンプルを(恐らくは)入手して、現在地球に向けて帰還中の「はやぶさ」は、日本の宇宙技術を世界に強烈にアピールすることになった。この成功の影には、頭脳集団「宇宙研」と、その歴史を築いた糸川英夫の努力があった――。
はやぶさ」は、日本が世界に誇るべき偉大な達成である。ということを、本書は終始読者に訴え続ける。著者・吉田武の筆致が実にドラマティックかつユニークで面白い。凝ったレトリックの部分に付箋を貼っていたらびっしりになってしまった。この人は作家になるべきではなかろうかとすら思う。そして日本のロケット工学の歴史を振り返り、糸川英夫の偉業を称えている。とにかく全編に亘って「日本人よ、この探査機に誇りを持て」というメッセージが込められているのだ。