法月綸太郎『法月綸太郎ミステリー塾 日本編 名探偵はなぜ時代から逃れられないのか』

法月による、日本ミステリ評論の集大成。文庫解説が中心だが、その前に置かれている笠井潔論「大量死と密室」と島田荘司論「挑発する皮膚」が白眉。とりわけ「大量死と密室」は、発表当時かなり話題になった記憶があり、私も影響を受けた傑作だ。笠井潔論、と言いながら、実はエラリイ・クイーン論(主に『チャイナ橙の謎』と『九尾の猫』)になってるあたりが、法月が常にクイーンの影響下にある存在だということを端的に表していると思われる。
文庫解説も「過去作品リスト」や「著者と自分との関わり」みたいなので文字数を稼いだ安易なものは一つもない。それぞれがその作家論になっている、読み応えのあるものばかりだ。そのあとも、「老いぼれる前にくたばりたい」「「清張的なもの」へのルサンチマンの忘却」など、短いながらも強烈な印象を残す評論ばかり。新本格ムーブメントを振り返る意味でも、一読をお薦めしたい。