大倉崇裕『警官倶楽部』

警官倶楽部 (ノン・ノベル)

警官倶楽部 (ノン・ノベル)

二人の制服警官が職務質問を装い、車の運転手を襲い現金を奪った。それは悪徳宗教団体「ギヤマンの鐘」の裏金だった。しかしなぜ警官が? 実は本物の警官ではなく、「警官オタク」たちだったのだ。彼らの仲間が抱えている借金返済に充てるために取った行動だった。しかしその直後、別の「警察オタク」の息子が誘拐され、その身代金として奪ったばかりのお金を使うことに……騒動は様々な人々を巻き込みながら、どんどん大きくなっていく。オタクたちもそれぞれの「専門家」を使って立ち向かう。最後に笑うのは誰だ?
警察オタクたちが大活躍する活劇コメディ。どの世界にもオタクはいて、しかも様々なジャンルがあることを再認識させてくれる。警察オタクにも、制服、鑑識、盗聴、銃、覆面パトカーなどなど、いろんな人たちがいるもの、らしい。ただし決して「強い」わけではないので、全体的にドタバタ喜劇になってしまうのは仕方がないところだ。『無法地帯』の大場久太郎が登場するし、秋葉原も出てくるので、ある意味『無法地帯』の番外編的な要素も大きいと思われる。携帯の着メロとして、刑事ドラマ「特捜最前線」のテーマソング「砂の十字架」が鳴るシーンに、個人的には一番ニヤリとさせられた。著者が大好きなドラマだと知っていたので。
帯の裏に伊坂幸太郎『陽気なギャング』シリーズが紹介されているのは、多分に版元の戦略によるものだろうが、あちらと比較されるのもちょっと可哀相な気もする。