道尾秀介『片眼の猿』

片眼の猿 One‐eyed monkeys

片眼の猿 One‐eyed monkeys

特徴的な耳を持つ三梨は、盗聴を専門とする探偵だ。現在は楽器メーカー「谷口楽器」に潜入し、ライバルメーカー黒井楽器のデザイン盗用に関する調査をしている。電車で聴いた会話をきっかけに、眼に特徴のある冬絵という女性に声を掛け、調査を手伝ってもらうことにしたのだが、黒井楽器内で殺人事件が起こった――7年前に三梨の元を去り自殺した秋絵の思い出、三梨の住むアパートの個性的な人間たち、そしてトウヘイが示す謎のトランプカードの「予言」……様々なデータが、衝撃の真実を指し示す!
ハードボイルドタッチだが、飄々とした作風だ。事件そのものにも驚かされる部分が多いが、それ以外にもいくつも驚きが用意されている。そして、それらの真相のほとんど全てに対して、巧妙な伏線が仕掛けられているので、全く気が抜けない。一見意味のなさそうなシーンにも伏線があったりすることに、読み返して初めて気付くことも。大トリックネタこそないものの、道尾秀介が持つ「天然の騙しのテクニック」が堪能できる。ますます凄い作家になっていきそうだ。