本多孝好『正義のミカタ』
- 作者: 本多孝好
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2007/05
- メディア: 単行本
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直球ど真ん中の青春小説だが、後半では大きな組織と戦うようになり、「正義とは何なのか」という主題も見え隠れするようになる。
いつものように、個性的な登場人物たちとぐいぐい読ませる展開、印象的な台詞などに出会える小説だ。これだから本多孝好は止められない。
ある女性が、自分がかつていじめっ子だったことを告白するシーンがある。大学進学後、いじめていた相手の子が店で明るい笑顔で接客している姿を見て、声を掛けようと店に入ったら、その子が急に固まって笑顔が消え、そこで初めて自分が彼女にしてきたことを悔いる。とても印象的な場面だ。
こういうのはいじめた側かいじめられた側か、どちらかを経験していないと理解できないだろう。私はいじめられた側の経験がある(小学校時代の一時期だけだが)ので、いろんなことを考えた。
他にも、高級腕時計をはめただけで周囲の見る目が変わるのも、妙なリアリティがある。
最も印象的な文章を引用しよう。
「彼らの言う正義は、ただの言葉なんだ。ただの理念だって言ってもいい。もちろん、それは悪いことじゃない。そんな言葉や理念すら持っていない人は大勢いるからね。悪いことじゃないけど、弱い」
(397ページ)