ケリー・テイラー=ルイス『シャクルトンに消された男たち』

南極横断隊の悲劇 シャクルトンに消された男たち

南極横断隊の悲劇 シャクルトンに消された男たち

シャクルトンによる南極探検隊は途中で遭難の憂き目に遭うものの、冷静な判断とリーダーシップで一人の犠牲者も出すことなく無事帰還を果たした――『エンデュアランス号遭難』などで知られる感動物語の裏に、「シャクルトン隊の反対側から南極に入り、食料基地を設営する」という目的の「ロス海支隊」が存在していた。そのあまりにも無謀すぎる探検と、極限状況に陥った隊員たちの不協和音、そして悲劇を追った一冊。シャクルトン隊は全員生還したが、ロス海支隊は三人の犠牲者を出している。その過程を初めて明らかにしている。タイトルこそ「シャクルトンに消された」となっているが、意図的に存在が隠されたのではなく、シャクルトン隊の生還劇があまりにも劇的すぎたために、先に帰還したロス海支隊が忘れ去られた、というのが真相のようだ。