詠坂雄二『遠海事件』
- 作者: 詠坂雄二
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/07/18
- メディア: 単行本
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86人もの人を殺した、日本最悪の連続殺人鬼・佐藤誠。彼はほとんどの場合、死体の隠蔽工作を施していたが、珍しくも死体をそのまま放置していたのみならず、自らが通報者となった事件があった。彼の殺害事件中、最も異質な事件、それが「遠海事件」だ――物語はドキュメンタリーのように語られるため、一瞬犯罪実話のように思わせるのだが、もちろん純然たるフィクションである。
書店員でもあった佐藤誠がなぜ、お世話になったはずの専務の首を切断したのか、この物語での謎のは、ほとんどそれだけだ。他の大量殺人については、語られない。
その動機の意外性も驚かされるが、その後に待ち受ける強烈なサプライズ。なるほど、こういう「驚かせ方」もあるのか、と感心した。あまりにもさり気なさ過ぎて、気付かない人も多いかも知れない。
小説としても、妙にいびつな感じがする。でもなんとなく、気になる作家になった。デビュー作『リロ・グラ・シスタ』も読んでみようかな。