原宏一『へんてこ隣人図鑑』

へんてこ隣人図鑑 (角川文庫)

へんてこ隣人図鑑 (角川文庫)

10年ほど前に、日販の「新刊展望」で連載されていたショートショート集。ありがちな発想を追い求めた末に「へんてこ」な思考になった人たちと、彼らに振り回される人々を描いている。
例えば、こんな話。

・外を歩いていると、道をきかれる。駅のホームでは、電車がいつ来るのかきかれる。みんながみんな自分にきいてきて大騒ぎになる……「きかれる男」
・靴をなるべく擦り減らさないように歩く人たちが入っている「委員会」……「へらず靴委員会」
・洗剤に書かれている「30〜40度のぬるま湯」が、何度なのか悩む。「大さじ2〜3杯」に、「鈍器のようなもの」に、「犯人はわけのわからないことを〜〜」に悩む新婚主婦……「わからん新婦」
・新しい建築物があると、そこにはそれ以前に何があったのかが気になって仕方がない……「それ以前」
・免許の更新に来たのに、名前を呼ばれないまま待ち続けること20年……「待つ男」

他にも「ホムリエ」、「ドアポケットの老人」、「怒られクラブ」など、どれもこれもが妙で面白い。ラストの「百年モグラ」ではメタ趣向もある。