鴻上尚史『「空気」と「世間」』

「空気」と「世間」 (講談社現代新書)

「空気」と「世間」 (講談社現代新書)

「空気を読め!」に代表される「空気」と「世間」。日本人を縛っているこの独特な風土から解き放たれるための重要な示唆が満載。これは傑作である。
バラエティ番組で大物芸人が仕切っている番組では、その大物芸人が好む「空気」があり、それに反するような発言を新人がすると、中堅芸人が「空気を読め!」と言う。でもこの空気は、この番組内でしか発生しておらず、視聴者たちの周辺にはもちろんない「空気」だ。しかし我々は、普段の生活でも「空気を読め」と言ったり言われたりすることがある。でもその場に、場を仕切る「大物芸人」がいただろうか……?
というエピソードから始まり、阿部謹也山本七平の著作を紹介しながら、「空気」と「世間」をめぐる考察が続く。
数年前、著者は、「いじめられている君へ」と題されたエッセイを新聞に発表した。そこでは、とにかく逃げればいいじゃないか、逃げることは恥じゃない、とアドバイスした。しかし、「学校裏サイトからは逃げられない」という反応があったそうだ。インターネットが作る「世間」にまで、人々は縛られるのだ。

人間がどこまで最低になれるかの実験を続けているのがインターネットですが、同時に、まだ見ぬ人と出会う可能性を広げてくれるのもインターネットなのです。
(225ページより)