書店は今、空前の「沼田まほかるブーム」である

実は今、書店の店頭では、空前の「沼田まほかるブーム」である。
沼田まほかるさんは、2004年に『九月が永遠に続けば』でホラーサスペンス大賞を受賞されてデビューした。「まほかる」なる不思議な語呂の名前は、一度聞いたら忘れられないと思う。
デビュー当時から評価は高い作家だったが、一般的な大ヒットには縁がなかったと思う。


しかし、今年になって、過去の文庫作品が立て続けに重版を重ねる大ヒット。その勢いは今も止まらない。いや、今がまさにブームの真っ只中にあると言ってもいい。今、沼田まほかるさんの文庫作品を展開されていない書店さんは、ブームに取り残されている、と言っても過言ではない。


きっかけははっきりしている。双葉社の今年の新刊ユリゴコロだ。

ユリゴコロ

ユリゴコロ

ユリゴコロ』も現在評価が高く、よく売れている作品だが、これと連動する形で、双葉社が過去の文庫作品『猫鳴り』を仕掛け始めた。そしてこれが、『ユリゴコロ』の評価と売行きに比例して、売れまくっている。
猫鳴り (双葉文庫)

猫鳴り (双葉文庫)

文庫の帯で今一番効果があるといわれる「第1位!」を大きく打ち出しているのも大きいのだろう。ちなみにこれは、本の雑誌増刊「おすすめ文庫王国2010−2011」エンターテインメント部門の、「第1位!」である。
ここまでは、『ユリゴコロ』と沼田まほかるさんを知っていただくために『猫鳴り』も売りたい、という双葉社の作戦が見事当たったのである。


そしてこの流れを察知して、他社が追随し始めた。
新潮社がデビュー作『九月が永遠に続けば』を、幻冬舎彼女がその名を知らない鳥たちを、それぞれ仕掛けだした。どちらも新しい帯をつけた。『九月が永遠に続けば』は、例の「第1位」を謳っているが、これは、「おすすめ文庫王国2008」国内ミステリー部門の、「第1位」である。そして今、沼田まほかる作品で最も勢いがあるのが、この『九月が永遠に続けば』である。

九月が永遠に続けば (新潮文庫)

九月が永遠に続けば (新潮文庫)


彼女がその名を知らない鳥たち』は「限りなく不愉快、でもまぎれもない最高傑作」とのコピーが載っている。裏には4人の書評家による推薦コメントが並んでいる。これも巧い。

彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)

彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)


この3点の文庫と『ユリゴコロ』で、今年最も注目度が増した作家は、間違いなく、沼田まほかるさんになるのではないだろうか。


ちなみに私は、何となく読む機会がなく、読まず嫌いの作家の一人である。『ユリゴコロ』は読んだが、実はあまり乗れなかったので、個人的な印象はあまり良くない。これも相性かなあと思う。