連城三紀彦さんの最後の短編集『小さな異邦人』は必読だ

小さな異邦人

小さな異邦人


連城三紀彦さんのラスト作品集『小さな異邦人』(文春)が凄い。
どの短編も連城さんらしい、男女の機微を描きながら大きな仕掛けが炸裂している。予想の右斜めを行く作品ばかりで、それはさすがに無理矢理では、と一瞬思ってしまうのもあるけれど、いやいや、これこそが連城さんなのだと思い直してしまう。
無人駅」「冬薔薇」「白雨」などが印象的だったが、最後の「小さな異邦人」! これがガチで凄い! 誘拐ミステリというジャンルに、まだこんな手があったのか、と感嘆せずにはおれない。間違いなく、日本の短編ミステリ史に残る作品である。生涯最後の作品が、なおもこれほどまでに前衛的だったとは。


3月下旬は、伊岡瞬『代償』、米澤穂信『満願』、連城三紀彦『小さな異邦人』と、今年のミステリのベスト級が立て続けに読めたことが幸せである。ちなみに今は道尾さん(のプルーフ)を読んでいるので、4作品連続になるかも知れない。


正直言って、連城さんは書店員に人気があった作家ではなかったし、ミステリファンの間でも、その作風からか若い世代に読まれていないイメージがある。だが、せめて本作品を、いや、最後の短編「小さな異邦人」だけでも、読んでみていただきたい。感動のあまり過去作品を読みたくなるはずである。そんな方に言いたい。
ようこそ、連城さんの華麗でトリッキーな世界へ!