『連城三紀彦レジェンド 傑作ミステリー集』

講談社文庫から、綾辻行人伊坂幸太郎小野不由美米澤穂信の4人の選者による連城作品アンソロジー連城三紀彦レジェンド 傑作ミステリー集』が発売された。

これは連城入門に相応しい素晴らしい短編集である。まさに大山脈を見上げているような感覚だ。綾辻行人伊坂幸太郎小野不由美米澤穂信の選者四人の連城リスペクトぶりも素晴らしい。


「依子の日記」綾辻選)は連城の騙しの原点のような作品で、綾辻さんご指摘の通り、単純だけど計算し尽くされている。
「眼の中の現場」(伊坂選)は、いったい何度どんでん返しがあるのだ、と眩暈さえ覚える華麗さ。
「桔梗の宿」(小野選)は私も連城ベストに挙げる作品のひとつ。いかに驚かされるか、その意外性の高さがミステリの評価基準だと思っていた私に、「真相を知って感動する」体験を与えてくれた最初の作品ではないかと思う。今回読み返してみて、思わず涙してしまった。
「親愛なるエス君へ」綾辻選)はいかにも綾辻さんが好きそうなネタ。知っててもやっぱり驚くし、何とも言えない異様な雰囲気が支配している。
「花衣の客」(米澤選)は恋愛小説の部分が大きいが、それを効果的にする驚愕の真相、その愛情の形に唸ってしまう。
「母の手紙」(伊坂選)は今回初読だったが、その真相は本当に読めなかった。まさか、そんなことだったとは! その向こうにある「歪んだ愛情」に深い余韻が残る作品だ。


以上6作品、どれもこれもオールタイムベスト級の作品だが、これくらいで驚いてはいけない。連城三紀彦にはこんなレベルの作品が山のようにゴロゴロしているのである。


巻末の綾辻・伊坂対談がまためちゃくちゃ面白い。この対談が二人の初対面というのも意外だが、伊坂さんの連城愛がすごいのだ。連城作品があまりにも読まれてないのはおかしいと、自著の宣伝で書店回りをした際に連城作品のプレゼン資料やPOPを持参していたというのだ。
伊坂さんの島田荘司愛もすごくて、『本格ミステリー宣言』で「この日本列島に、現在の推理文壇を震撼させる才能が潜んでいると信じている」と書いてあるのを見て、「それは俺のことだ。ここにいるじゃないか。島田さん、ここにいまーす」と高校生当時の伊坂さんは思ったというw


もうみんな、マジで連城読んで欲しいよ。日本を代表するミステリ作家たちがリスペクトする連城三紀彦をまだ未読な人がいたら、それは人生損してると断言したい!!

「桔梗の宿」より。何度読み返しても泣ける一文を引用:

「私は犯人に告白された一人の警察官だった。だが同時にひとりの娘が、命がけで頼んだ約束を守ってやりたいと願う二十五歳の、感傷しか持ち合わせぬ若者だったのである」