あのジョン・ディクスン・カーの孫娘も書いていた!?古今東西「切り裂きジャック」テーマの作品たち

シェリー・ディクスン・カー『ザ・リッパー』という作品を読みました。

ミステリファンなら名前を聞いただけでピンとくる通り、あのジョン・ディクスン・カーの孫娘さんだそうです。
現代のアメリカ人少女ケイティが、マダム・タッソーの蝋人形館で「切り裂きジャック」のコーナーを見たことをきっかけに、切り裂きジャック事件が起こった1888年にタイムスリップします。事件の全貌をほぼ知っている状態、しかも被害者の一人となるベアトリクスはケイティの従姉妹になっていることで、事件の阻止を図り、切り裂きジャックの正体を突き止めようとするケイティでしたが……。
カーといえば「不可能犯罪」「密室トリック」ですが、さすがにその作風は継いでません。が、19世紀にタイムスリップする設定などは、まさにカーの遺伝子といっても良いでしょう。オスカー・ワイルド、ブラム・ストーカーなどの実在の人物が登場したり、ケイティがうっかり「シャーロック・ホームズ」の名前を出して、誰それ? と言われるシーン(まだホームズものは「緋色の研究」くらいしか出てなかったころで、さほど知られてなかったのです)など、タイムスリップ小説の楽しさと、ミステリの面白味が上手く融合されています。
切り裂きジャックの正体については、あくまでも本書オリジナルの話なので、あの事件の真相は!? 的な話にはなっていません。


そう、「切り裂きジャック」事件は、世界を代表する「未解決事件」のひとつとして広く知られています。日本の「三億円事件」「グリコ・森永事件」に匹敵する、というと失礼なくらい、切り裂きジャック事件は有名です。犯人が挑戦状を送ってくるなど、証拠がいっぱいあるのに犯人が不明という異質な事件は、ミステリ作家に限らず、数多くの作家たちの興味を惹いたことでしょう。その真相を追及したテーマの作品もたくさんあります。そんな中から、特に有名なものをいくつか紹介しましょう。



アラン・ムーアフロム・ヘル

フロム・ヘル 上

フロム・ヘル 上

フロム・ヘル 下

フロム・ヘル 下

いきなり漫画からで恐縮ですが、これは名作&傑作です。映画化もされました。上下巻の大作であり、何よりも情報量が半端なく多い作品ですが、きちんと読み込んでいくと、切り裂きジャック事件の全貌が分かります。コリン・ウィルソンの説をメインにしているとのこと。



パトリシア・コーンウェル切り裂きジャック

切り裂きジャック

切り裂きジャック

検屍官』のケイ・スカーペッタのシリーズで知られるコーンウェルが、私財を湯水のように使って最新のDNA分析などを駆使して(あとがきによると、調査に7億円が投じられたとのこと)真相を推理したノンフィクション。



服部まゆみ『一八八八切り裂きジャック

一八八八切り裂きジャック (角川文庫)

一八八八切り裂きジャック (角川文庫)

私は未読ですが、服部まゆみさんによる大作ミステリです。『時のアラベスク』で横溝正史賞を受賞してデビューした服部さんですが、若くして亡くなられたため、世に残った作品が多くありません。本書はその一つです。最近、『この闇と光』が復刊したりしてますので、再評価して欲しい作家のひとりです。



島田荘司切り裂きジャック 百年の孤独

切り裂きジャック・百年の孤独 (文春文庫)

切り裂きジャック・百年の孤独 (文春文庫)

あの切り裂きジャック事件にインスパイアされた事件が百年後のロンドンで発生する、というミステリ。過去の事件についても大胆な仮説が展開されています。現代の方の事件を解決するのは、その時イギリスにいた謎の日本人「クリーン・ミステリ」氏。その正体は……まあ言わずもがなでしょうが、一応伏せておきますねw



最近、最新のDNA鑑定により、切り裂きジャックの正体が判明した、というニュースも出ています。さて本当の真相は……?
切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)とは【アーロン・コスミンスキー】 - NAVER まとめ