つ、ついにあの『白樺荘事件』が読める日が来る……のか?(未完だけど)

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
とか言いながら、去年(2016年)に何本更新したんだろう、と見ると、たったの3本でした。こりゃ不味いでしょう。なんか、ちゃんとした記事を書かねば、しっかり構成せねば、と気負っていた気がします。もっとだらだらと、ちょっとしたことでもすぐ更新できるようにしたいですね。


というわけで、2017年の1発目ですが、論創社の近刊ページを見てびっくりしたわけです。
論創社といえば、どちらかといえばニッチなところを突いたマニアックな翻訳作品や、忘れ去られた日本人作家の掘り起こしを積極的にやってる出版社です。
その論創社の1月予定の新刊に、あの『ミステリ読者のための連城三紀彦全作品ガイド』があります。浅木原忍さんが私家版(同人誌)として出版した本が本格ミステリ大賞を受賞するという快挙を達成した作品が、完全版として商業出版になります。本体2,500円というのは、ちょっと高い気もするけど、連城三紀彦再評価をしてくださった重要な作品なので、応援したいところです。
ミステリ読者のための連城三紀彦全作品ガイド | 論創社


その発売日などを確認しようとしてびっくりしたことが。今春予定に鮎川哲也探偵小説選』があります。なにが収録されるのだろう、と見て驚愕。ああああの、『白樺荘事件』のタイトルが!!

絶筆となった未完作品「白樺荘事件」の現存部分を収録します。

と明記されています。不完全作品なのはファンなら重々承知。なんせあの鮎川哲也と十三の謎」として出る予定だったものですよ。二十数年目にしてようやく陽の目を見ることになる『白樺荘事件』、いったいどこまで出来ていたのか、気になるじゃないですか。
詳しくはこちらを参照↓
鮎川哲也探偵小説選 | 論創社


とまあ、こんな感じの更新をゆるゆるとやっていきたいです。それと本の感想や、名作再紹介などを積極的なやりたいです。よろしくお願いします。

2017年の正月は著作権フリーになる大下宇陀児作品を読もう!

間もなく2016年も終わり。2017年がやってきます。
お正月といえば、(1年前にも書きましたが)青空文庫ですね。
青空文庫 Aozora Bunko

そう、著者の没後50年が経過した作品は著作権フリーになり、青空文庫でも公開される対象になります。
あのTPPが始まれば、50年が70年に延長されてフリーになる期間が延びてしまう、という危惧がありましたが、今のところまだ心配することはなさそうなので、来年は大丈夫ですね。
2016年には、江戸川乱歩谷崎潤一郎中勘助などの超大物作家が著作権フリーになって話題になりました。特に江戸川乱歩青空文庫だけでなく、各出版社から様々な文庫が出て売場がにぎわいました。人気作家がセレクトした作品集の文春文庫、明智小五郎事件簿としてまとめた集英社文庫など、切り口も面白かったと思います。

2016年に較べると2017年は、乱歩・谷崎級のビッグネームがいなくてやや寂しい感じがしますが、そんな中でも亀井勝一郎鈴木大拙山中峯太郎などが著作権フリーになります。そしてミステリマニア的にはやはり、大下宇陀児が重要ですね。
正直、大下宇陀児は最近では忘れ去られている感じがしますが、東京創元社の「日本探偵小説全集」にも収録されている(角田喜久雄との連名での一巻ではありますが)ほど、重要な作家の一人です。著作権フリーになるのを機に、再評価されねことを期待したいです。

青空文庫の作業中一覧によると、2017年元日に公開される作品は「擬似新年」のようです。楽しみですね。
作業中 作家別作品一覧:大下 宇陀児

木村元彦『すべての「笑い」はドキュメンタリーである』

どうも、政宗です。
今年の正月に「今年こそブログ更新を頑張ります」とか書いておきながら、半年間何も書かなかったという体たらく。申し訳ありません。できれば毎日更新したい気持ちでおりますが、まあ、ぼちぼちマイペースでやっていきます。


そんなわけで、今日は最近読んだ本から、こちらをご紹介します。

すべての「笑い」はドキュメンタリーである

すべての「笑い」はドキュメンタリーである


80年代に関西で放送していた人気番組「突然ガバチョ!」。スタジオ内で笑った観客が筋肉ムキムキの男たちによって強制的に退場させられる「TVにらめっこ」などで人気を博した番組だ(そして実はこのコーナーこそ、年末恒例の「笑ってはいけない」シリーズの元ネタでもある)。この番組ではラストに生放送のパート「突然生放送」があった。生放送という台本のないドラマを面白がったわけだ。このコーナーの企画会議でなかなかアイデアが出てこなかった時、たまたま会社見学にきていた制作会社の新人がいきなり面白いネタを提案し、すぐに採用された。それが倉本美津留のTV初企画だった。やがて倉本はADから放送作家に転向し、これまた関西のお化け番組だった「夜はクネクネ」(原田伸郎角淳一が街をぶらぶらして一般人にインタビューして歩くだけの番組)に携わった。倉本美津留の企画の面白さこそ、ドキュメンタリー性にあった。


EXテレビ」では上岡龍太郎島田紳助がやっていた火曜日を担当。視聴率をテーマにした回では、「視聴率調査機のある2600世帯だけにおくる限定番組」と銘打ち、放送後にNHK教育の「砂嵐」を見てもらって視聴率を出そう、という実験を行い、見事に「砂嵐」に対して2%の視聴率を叩き出した。局の上司からもビデオリサーチからも怒られた企画だったが、日本民間放送連盟賞のテレビ娯楽部門最優秀賞を受賞した。


番組中に上岡龍太郎が激怒してスタジオを去っても、その展開とその後を全部見せることによって企画として成立させた。番組制作に携わるスタッフを不要だと思う人間から一人ずつ帰らせていって、放送事故になったら負け、という「テレビスタッフ山崩し」など、ドキュメンタリーをそのままバラエティに昇華させたのが倉本美津留の真骨頂であった。現在の「漫勉」も倉本と浦沢直樹との企画である。


本書『すべての「笑い」はドキュメンタリーである』は、倉本美津留というTV界の天才の業績を追ったノンフィクションだ。


こういう内容の本を書いたのが、あの『オシムの言葉』や、最近話題の『徳は孤ならず』の著者、木村元彦さんだということを信じてくれる人は、一体どのくらいいるのだろう。しかも『徳は孤ならず』とほぼ同時期の出版である。


そういえば、『徳は孤ならず』の主人公、今西和男さんと、『すべての「笑い」はドキュメンタリーである』の主人公、倉本美津留さんには、共通点がひとつある。二人とも、広島県出身ということだ。


徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男

徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男

2015年の震えた本5冊

2016年はブログ更新を頑張りたいと思います。
と、毎年宣言してる気もしますが……。
その年に読んだ本を振り返る企画は本当は去年のうちにやるべきなのですが、まあいろいろありまして、2016年の本格的な更新1発目として、去年の読書振り返りを簡単に紹介してみます。といっても、あんまりだらだらと書いても仕方ないので、「読みながら震えた本」という基準で5冊だけ厳選してみました。


米澤穂信『真実の一〇メートル手前』(東京創元社

米澤さんは長編『王とサーカス』ももちろん凄かったのですが、年末も押し迫って読んだこの短編集に打ち震えましたね。読書メーターの登録ではこれが2015年最後になっています。『王とサーカス』のテーマ性と『満願』の短編の切れを併せ持った作品集だと思いました。


辻村深月『朝が来る』(文藝春秋

軽い気持ちで読んでいたら鳥肌が立ってきた作品。特に後半の壮絶な物語が凄くて、でもただ単に可哀想とも言えない部分が切なくてやり切れなくて……。私はミステリとしても非常に読み応えのある作品だと思ったのですが、年末のランキングにはまったく引っ掛からなくて残念でした。


新保博久『ミステリ編集道』(本の雑誌社

日本ミステリ界を支えてきた編集者たちへのインタビュー集。とにかく伝説級のすごい話のオンパレードで、こういう人たち(と、もちろん作家たち)が、ミステリというジャンルを作り上げてきたんだなあというのが実感できます。今年読んだ本で一番付箋が付いた本でもあります。


篠本634『HKT48成長記 腐ったら、負け』(角川春樹事務所)

すみません、やっぱりこれを入れさせてくださいw
HKT48の歴史をまとめた本ですが、メンバーの発言を多く挿入して、当人たちの成長ぶりがより浮き彫りになる構成になっています。特にセンターポジションをめぐる攻防は、恐らく他のグループよりもずっと熱いと思います。
ただ気になるのは、指原の存在感と影響力の大きさ。とにかくメンバーたちのコメントに「さっしーが〜〜」「さしこちゃんが〜〜」が多い。それだけ指原が凄いことの証しでもあるけれど、いずれ遠くないうちに彼女もグループを去るわけで、そのあとに残った子たちがどうしていくのか、というビジョンを今から考えておいた方がいいと思います。そこにいち早く気付いたメンバーこそが、未来のHKT48を引っ張っていくはずです。


田口幹人『まちの本屋』(ポプラ社

そして最後はやはり、さわや書店・田口さんの本を。地方の書店ができることは何かを常に考えているさわや書店。本屋としての理想の姿がここにあると思います。全ての書店員必読の本であるとともに、自分も何ができるのかを考えなければいけないと思っています。


今年2016年も、いい本に出合えるのを楽しみにしています。

2015年の読書まとめ(読書メーターより)

あけましておめでとうございます。今年こそブログ更新を頑張りたいです(毎年言ってる気がしますが……)。
読書メーターのまとめより、去年読んだ本と感想を一気にまとめました。最近のものから遡る形です。168冊あります。一気にどうぞ!


2015年の読書メーター
読んだ本の数:168冊
読んだページ数:51074ページ
ナイス数:2372ナイス

真実の10メートル手前真実の10メートル手前感想
『王とサーカス』の太刀洗万智が登場する短編集。『王とサーカス』に見られたテーマ性を維持したまま、『満願』のような短編の切れが素晴らしい。舞台や事件の幅広さは、著者の安定した筆力があればこそだと思う。ミステリの意外性では「恋累心中」が特に良かった。『さよなら妖精』のスピンオフ作品もある。年の瀬にきて今年のベスト級にまた出会えたことは嬉しい。大傑作だぞ!
読了日:12月27日 著者:米澤穂信
百匹の踊る猫 刑事課・亜坂誠 事件ファイル001 (集英社文庫)百匹の踊る猫 刑事課・亜坂誠 事件ファイル001 (集英社文庫)感想
あの浅暮さんが警察小説!? どんな捻くれた作品なんだろうと思いながら読んだら、なんとびっくり、実に正統派で真面目でガチガチにリアルな警察小説だった。誘拐事件だが、犯人側の要求がユニークで、公害問題を告発するという社会性も含んでいる。犯人を特定していく過程では王道のミステリとして展開し、ベテランと若い主人公との掛け合いなど、警察物の面白さをきちんと踏んでいる。いやはや驚きました。シリーズ化しそうなので、楽しみです。
読了日:12月22日 著者:浅暮三文
江ノ島西浦写真館江ノ島西浦写真館感想
『ビブリア古書堂』の三上さんの新シリーズ(になるのか?)。残された写真の謎というアイデアがとてもいいし、主人公が写真嫌いになるエピソードには現代性もあり、幅広さを感じさせる。何よりキャラクターたちが立っていて一気に読める。
読了日:12月22日 著者:三上延
カールの降誕祭カールの降誕祭感想
やはりシーラッハは短編の切れ味が鋭い。ミステリ的な驚きではないが、人間の業というか、狂気が芽生える瞬間を描かせると本当に上手いと思う。今回はストーリーにマッチした挿絵が豊富で、より効果を上げていると感じた。
読了日:12月12日 著者:フェルディナント・フォン・シーラッハ
このミステリーがすごい! 2016年版このミステリーがすごい! 2016年版感想
こちらも毎年恒例のランキング本。こちらは特に国内ベスト3作家のインタビューが、それぞれの作品と作者の魅力を見事に引き出していて興味深かった。
読了日:12月12日 著者:
ロマンシエロマンシエ感想
原田マハ作品としては、かなり軽いタッチでコミカルに読み進められる作品。美智之輔のキャピキャピ感からして楽しいし、「暴れ鮫」シリーズや個性的な登場人物など、想像力を掻き立てるネタも満載。しかしクライマックスでは急に切なくなる展開もまた効果的だ。現実の展覧会とリンクする趣向も面白い。東京に行く機会があれば行ってみたい。
読了日:12月12日 著者:原田マハ
2016本格ミステリ・ベスト102016本格ミステリ・ベスト10感想
年に一度のお祭り期間。今年はランキングが読めなかっただけに意外性のあるベストテンになっているように思う。つい最近読んだ作品もあって、それは納得の順位だった。今年は海外作品も読めたので国内・海外ともにアンケートに参加させていただいた。今年の新企画・書店員アンケートにも参加したが、レギュレーションが定まっていなかったのでまとまりが無くなって勿体無い気もした。これはこれで面白いからいいけれども。
読了日:12月9日 著者:探偵小説研究会
モナドの領域モナドの領域感想
女性の片腕だけが発見される冒頭から、片腕パンの流行などの思いもよらない展開になり、やがてGOD(=神)が憑依した結野教授をめぐるドタバタ劇に発展。いかにもな筒井世界だが、後半の社会批評的な語りの鋭さは、筒井本人の思いをGODの口を通じて書いてるのかも知れない、とも感じた。
読了日:12月7日 著者:筒井康隆
ハヤカワ文庫SF総解説2000ハヤカワ文庫SF総解説2000感想
ハヤカワ文庫SF2000番達成記念企画。SF文庫の今まで出た作品全てを解説しただけでもすごい。執筆陣も豪華かつ実に大勢で、総力戦で作り上げたブックガイドとも言えよう。
読了日:12月7日 著者:
ユートピアユートピア感想
表向きはいい話っぽいのに、それぞれの本音と建前や、内面に留めていた気持ちが出てくるにつれ、話が嫌な方向に進んでいき、事件を生む。その過程や内面が怖すぎて、普通のミステリよりも遥かに重い。イヤミスを得意とする湊さんの「腹黒ミステリ」とも言える。ラストの衝撃もすごい。
読了日:12月7日 著者:湊かなえ
鍵の掛かった男鍵の掛かった男感想
大阪のホテルで死んでいた男は、そのホテルに何年も常駐し、莫大な資産を持っていた。果たして自殺か、他殺か……。火村と有栖の推理によって、男の秘密が少しずつ明らかになると共に、周囲の人物たちも巻き込み、そのドラマティックな物語が胸を打つ。その論理展開も見事と言うしかなく、有栖川有栖さんが人間ドラマを描くとこうなる、という小説になった。間違いなく、火村シリーズの最高傑作だと断言したい。素晴らしいです。
読了日:12月3日 著者:有栖川有栖
よつばと! (13) (電撃コミックス)よつばと! (13) (電撃コミックス)感想
もうほんとに久しぶりの『よつばと!』で、すぐ読み終えたけど、もう勿体無い気がする。なんといっても「ばーちゃん」の存在感と、別れたくないよつばの抵抗が可愛い。小ネタ系では「ふつうのパンマン」がツボだった。あー次はいつ読めるのかなあ。
読了日:12月1日 著者:あずまきよひこ
市川崑と『犬神家の一族』 (新潮新書)市川崑と『犬神家の一族』 (新潮新書)感想
市川崑監督作品の映画論を、特に「犬神家の一族」を中心に据えて解説した本。ナレーターとしての石坂浩二の存在など、今まで気付かなかった指摘も多く、「犬神家の一族」を旧版、新版ともに観返したくなる。最終章の、当の石坂浩二との対談も面白い。
読了日:11月30日 著者:春日太一
おほまんがおほまんが感想
九州で活躍するピン芸人にして、あの「ケータイ大喜利」レジェンドでもある「おほ」さんがツイッターで発表している1コママンガの傑作集。大喜利で鍛えられただけあって笑いのセンスが絶妙で、そこに緩いタッチの漫画が効果を上げていて、爆笑というよりは、つい吹き出してしまうネタが続く。ので、人前で読むのは避けた方がいいかも知れない。お薦めです!
読了日:11月30日 著者:おほしんたろう
片桐大三郎とXYZの悲劇片桐大三郎とXYZの悲劇感想
これは参った。さすが倉知さんだ。もっと早く読んでおけば、あれやあれの投票にも入れてたのに、ということが悔やまれる。往年の時代劇スターが名探偵、というキャラ小説だと思って敬遠していたのだが、クイーンのドルリー・レーン四部作を本歌取りした、本格の大傑作であった。一つ一つデータを吟味していく醍醐味が味わえるし、最後の趣向もすっかり騙されてしまい、悔しいけど感動してしまった。今年の本格ミステリの収穫といえよう。素晴らしいです。
読了日:11月23日 著者:倉知淳
王国は誰のもの (創元クライム・クラブ)王国は誰のもの (創元クライム・クラブ)感想
富豪が築いた王国の城で、王が殺された。容疑者はその場に招待されていた吸血鬼、狼男、ミイラ男、ゾンビの怪人たち……。個人が王国を持ってて大きな城があって、というところからしてなかなか要求するハードルが高いが、そういう世界観で繰り広げられる本格ミステリだと割り切って読めば、なかなか楽しめる。真相部分でも驚きがあり、感心した。折角の舞台設定なので、もっとやりたい放題突き抜けていれば、バカミスとして高く評価されていたと思う。いろんな意味で惜しい作品。
読了日:11月20日 著者:安萬純一
君と時計と嘘の塔 第一幕 (講談社タイガ)君と時計と嘘の塔 第一幕 (講談社タイガ)感想
タイムリープもの大好き人間だが、このタイムリープの設定がやや取っつき難くて困った。ただし、全体像が分かってからは一気に読めた。青春小説として、繊細な心の動きを描く文章力もしっかりしていて、クライマックスに向けてハラハラ感が持続する。そしてラスト、ええー、ここで終わるの!? 早く続きを読ませてくれ、となること請け合いだ。
読了日:11月19日 著者:綾崎隼
ワケありな本ワケありな本
読了日:11月18日 著者:沢辺有司
まちの本屋 知を編み、血を継ぎ、地を耕すまちの本屋 知を編み、血を継ぎ、地を耕す感想
書店業界の知名度ナンバーワン書店員、盛岡のさわや書店の田口さんが語る本屋の現在と未来。全編から溢れる郷土愛もさることながら、本屋を「耕す」、「迷ったら返品の山に聞け」、「本屋村の論理は読者やお客様には関係ない」など、心に響く文章も多い。何度か読み返すことになりそうだ。実家の本屋を潰した経験も、現在の田口さんを強くしたのではないかと推察する。本書を読んだ書店員は必ず意識が変わるだろう。すぐに棚に変化はないかも知れないが、いつか必ず糧になる。お客様と一緒に、本屋を耕していきましょう。
読了日:11月17日 著者:田口幹人
密室蒐集家 (文春文庫)密室蒐集家 (文春文庫)感想
ハードカバーで既読だが、文庫化につき再読。優れたミステリは何度読んでも面白いことが実証された。密室トリックのすごさだけでなく、犯人の意外性が素晴らしく、それが緻密な密室トリックと絡み合うことで、より傑作度が増している。千街晶之さんの解説の通り、オールタイムベスト級の本格ミステリ短編集だ。
読了日:11月14日 著者:大山誠一郎
不条理な殺人不条理な殺人感想
祥伝社文庫のオリジナルアンソロジーで、最近、有隣堂限定で復刊されたもの。いくつか既読の短編もあったが、全般的に楽しめた。ただし「不条理」というほどのテーマ性はあまり感じられなかったけれども。不条理さでは、冒頭の山口雅也「モルグ氏の素晴らしきクリスマス・イヴ」が最高だった。
読了日:11月10日 著者:法月綸太郎,山口雅也,有栖川有栖,加納朋子,西澤保彦,恩田陸,倉知淳,若竹七海,近藤史恵,柴田よしき
江田島海軍兵学校 世界最高の教育機関 (角川新書)江田島海軍兵学校 世界最高の教育機関 (角川新書)感想
日本最高レベルの兵学校だった江田島海軍兵学校に通っていた経験を持つ著者が、兵学校で学んだ教育の思い出を詳細に語った本。特に人間教育に関する記述が多く、学習部分での教育システムについてももっと触れてくれれば、その魅力がより伝わったように思った。
読了日:11月10日 著者:徳川宗英
記憶屋 (角川ホラー文庫)記憶屋 (角川ホラー文庫)感想
ホラー小説大賞・読者賞受賞作。記憶を消してくれる「記憶屋」という都市伝説をめぐる切ない系ホラー。エピソードごとのリンクもあって、ミステリ的な要素を含みながらも、ラストでは深い余韻を残す。安定した面白さは感じられるが、いかんせん『ぼぎわんが、来る』が完璧すぎたので、読者賞に留まってしまった感じもする。
読了日:11月9日 著者:織守きょうや
ぼぎわんが、来るぼぎわんが、来る感想
これは超すげえ傑作! 怖えー! 基本は「正体不明の怖いものと対峙する」という、実にオーソドックスな怪談話なのに、随所に新しさを感じさせる。章が変わると、同じ話なのに雰囲気がガラッと変わり、全く違った世界が広がるのもすごい。とても新人の小説とは信じられない騙りの上手さも高く評価したい。デビュー作にして、新時代の怪談を牽引する存在になるだろう。とにかく読め、すげえぞ!
読了日:11月2日 著者:澤村伊智
重版出来! 6 (ビッグコミックス)重版出来! 6 (ビッグコミックス)感想
web媒体漫画、地方の書店、校閲など、新しい題材を投入することで飽きさせない工夫が感じられる。ますます本に対する愛着が湧いてくるコミックだ。
読了日:10月31日 著者:松田奈緒子
運命は、嘘をつく (文春文庫 み 51-1)運命は、嘘をつく (文春文庫 み 51-1)感想
予知夢を見ることができる月子を中心に、運命に翻弄される女性たちを描く連作ミステリ。第一章の時点で犯人は判明するのに、それ以降にもいくつかのサプライズポイントが用意されている。極めつきはエピローグのラスト。さり気ないようでいて、実に恐ろしい幕引きだ。初野晴さんによる解説は異例の小説形式。しかも「ハルチカ」シリーズだが、出来れば本編読了後に読んで欲しい。
読了日:10月30日 著者:水生大海
人狼作家人狼作家感想
ミステリ作家たちが本気で人狼ゲームを開催し、それを小説化した作品。しかもどれを誰がやっているか、は最後まで伏せられているため、中の人を想像(推理)しながらも読める。「人狼」慣れしてないので初日〜2日目の流れが把握しにくかったが、腹の探り合いと疑心暗鬼が増していく後半の盛り上がりは楽しめた。しかし、あの人のあの仕掛けはそりゃ分かるわけがないトマト。(なんか、トマトって言わなきゃいけない流れかと思って)
読了日:10月30日 著者:
真犯人真犯人感想
41年前の誘拐事件、27年前の迷宮入り目前の再捜査、そして現代に起こった新たな事件。3つの時代の物語が進行し、様々な仮説を見立てて捜査していきながら、なかなか真相が見えてこない。そのもどかしさがページを繰る手を止めさせてくれないのだ。最後の最後まで緊迫感が衰えない傑作だ。
読了日:10月29日 著者:翔田寛
AKB48、被災地へ行く (岩波ジュニア新書)AKB48、被災地へ行く (岩波ジュニア新書)感想
AKB48グループは現在も月に一度、東日本大震災の被災地訪問活動を続けていることは、ファン以外にはほとんど知られていない。その活動の歴史やエピソードを紹介した本。山田町のこども達とのジオラマを通じた交流や、地元出身のチーム8メンバーのエピソードなど、感動せずにはおれない。AKBに対する印象がきっと変わる本だと思う。
読了日:10月26日 著者:石原真
天国でまた会おう(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)天国でまた会おう(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』に比べるとミステリ度は薄いが、犯罪小説として充分面白い。ルメートルがどんでん返しのセンスだけでなく、ストーリーテラーとして一級品であることの証明だ。終戦からのし上がっていくプラデルの徹底した悪人ぶり、そのプラデルに戦地で殺されかけ、復讐に燃えるアルベール、アルベールと共に無謀にも見える詐欺計画を実行するエドゥアール。戦争の虚しさをバックに描きながら、最後まで一気に読ませるエンタメに仕上がっている。こんな小説も書けるとは、まったくどこまで凄いのだ、ルメートル
読了日:10月24日 著者:ピエールルメートル,PierreLemaitre
天国でまた会おう(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)天国でまた会おう(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
読了日:10月24日 著者:ピエールルメートル,PierreLemaitre
その女アレックス (文春文庫)その女アレックス (文春文庫)感想
これは評判通りの傑作。かなりハードルが上がった状態で読んだが、そのハードルも軽々と飛び越えるような作品だった。内容に関しても今までほとんど伝わらなかったのも納得で、これは他人に話し難い、というか話せない。人間を痛めつける描写もかなり過激で、それなりの覚悟も必要だ。そして一番感じたことは、本書を未読の状態で『悲しみのイレーヌ』を読んだ私がいかにラッキーだったかということだ。カミーユが前の事件を引きずり過ぎてるのだ(その気持ちも痛いほど分かる)。『イレーヌ』→『アレックス』の順で読むことを強くお勧めしたい。
読了日:10月24日 著者:ピエールルメートル
新しい十五匹のネズミのフライ: ジョン・H・ワトソンの冒険新しい十五匹のネズミのフライ: ジョン・H・ワトソンの冒険感想
島田荘司によるホームズパスティーシュ。あの「赤毛組合」事件には続きがあった。実はあの事件は壮大な陰謀の始まりに過ぎなかったのだ! 島田さんのホームズ愛が詰まった大長編。「まだらの紐」「這う人」にまつわるエピソードや、モリアーティ教授、コカイン中毒ネタなど、やりたい放題でありながら、説得力と面白さを兼ね備えている。タイトルの謎も、ここまで引っ張るほどのものか、と言われると正直微妙だが、面白いんだから仕方がない。『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』の世界観をさらに上回ったパロディ精神には参りました。
読了日:10月20日 著者:島田荘司
曲がり角の死体 (創元推理文庫)曲がり角の死体 (創元推理文庫)感想
急カーブでの交通事故で大破した車を運転していた男は、事故の前に既に死んでいた……実に魅力的な謎で始まる事件。その解決の意外性はイマイチだったが、黄金時代本格らしい雰囲気が充分で、それを味わえるだけでも収穫だと思う。田舎町に巨大商業施設を入れようとしていた男(被害者)と、賛否両論の商店街、また被害者の周辺の人間関係など、現代にも通ずる社会性もあるので、今読んでもあまり古臭さを感じさせない。
読了日:10月20日 著者:E・C・R・ロラック
惑星カロン惑星カロン感想
ハルチカシリーズ読むのも久しぶり。『退出ゲーム』の頃は、まさかアニメ化されるなんて思ってもみなかったなあ。青春ミステリの面白さは変わらず、最後の表題作「惑星カロン」で今までの小ネタが繋がって、事件そのものも深い余韻を残してくれる。「理由ありの旧校舎」の謎の奇想ぶりが最高だった(ネタは分かっちゃったけどね)。
読了日:10月15日 著者:初野晴
微笑む人 (実業之日本社文庫)微笑む人 (実業之日本社文庫)感想
ハードカバーで読んでいるが、文庫化により再読。昨今のワイドショーでの事件報道など、マスコミがある程度のストーリーを作り上げて取材してる感じがすることがあって、そういうのを想起させる小説。ラストの「突き放した感」こそが本書の真骨頂で、注意して作り上げたトランプタワーが完成目前に一気に崩れ落ちる瞬間に近い感覚だ。
読了日:10月15日 著者:貫井徳郎
悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)感想
いやはや驚いた。これは超傑作だ。冒頭の凄惨な殺人現場からして尋常な雰囲気ではないが、本格フリークが間違いなく狂喜乱舞するメインプロット、そして全く予想外な方向に進む第一部ラストから第二部への展開など、面白い要素が詰まっている。フランス語の小説だということを忘れさせるほど読み易い翻訳も素晴らしい。実は私は『その女アレックス』は未読だったのだが、結果的にその方が良かった。『アレックス』未読の方は、絶対に『悲しみのイレーヌ』から読んだ方がいいと思う。何度でも言うが、本当に傑作だ。
読了日:10月13日 著者:
陽気なギャングは三つ数えろ (ノン・ノベル)陽気なギャングは三つ数えろ (ノン・ノベル)感想
あの4人組が9年振りに帰ってきた。このシリーズは著者自らが一番楽しんで書いていることが分かるので、読んでても本当に楽しくて、もっといろんな事件が起きればいいのにここで終わっちゃうのかよ、という贅沢な不満すら言いたくなる。洒落た会話と、伏線の回収の楽しさも健在だ。
読了日:10月13日 著者:伊坂幸太郎
マンガ担当書店員が全力で薦める本当にすごいマンガはこれだ !マンガ担当書店員が全力で薦める本当にすごいマンガはこれだ !感想
そのセレクトと仕掛力、展開の見事さに定評があり、私も一目置いている書店員さん「仕掛け番長」が、面白いマンガを紹介した本。ただ仕掛けるだけでなく、数字で結果を残しており、その推薦本を復刊させるほどのパワーを持ち合わせていることが仕掛け番長のすごいところだ。本書からブレイクするマンガが出てくるかも知れないね。
読了日:10月13日 著者:仕掛け番長
群狼の舞: 満州国演義三 (新潮文庫)群狼の舞: 満州国演義三 (新潮文庫)感想
満州国演義シリーズの文庫化読み返しシリーズ第三巻。満州国の建国から、五・一五事件リットン調査団報告からの日本の国際連盟孤立化と脱退、熱河侵攻などの重要な事件が次々と起こり、建国の時点から早くも崩壊への序曲が響いている様子が分かる。ラストで太郎の身に降りかかる悲劇も、敷島兄弟の没落の始まりを象徴しているようだ。現代日本もまた、この時代と似た空気を感じてしまう。まさに今こそ読まれるべき年代記なのだ。
読了日:10月8日 著者:船戸与一
火葬国風景 (創元推理文庫)火葬国風景 (創元推理文庫)感想
『獏鸚』に続く、海野十三の傑作短編集。幻想ミステリやSFが中心だが、どれも独創性の高い発想力に驚くばかりだ。意外なところからスパイ案件が発覚する「盲光線事件」、乱歩を思わせる幻想世界が広がる(と見せかけて、あっという間に終わる)「火葬国風景」が個人的に面白かったが、他の作品も傑作揃いだ。
読了日:10月5日 著者:海野十三
あなたは誰? (ちくま文庫)あなたは誰? (ちくま文庫)感想
ヘレン・マクロイの初訳初期長編。謎めいた冒頭から一気に読ませるストーリーで、本格ミステリでは扱い難いテーマを取り入れた上でちゃんと犯人当て小説になっており、意外性も伏線もあることに驚く。発表当時も衝撃だったろうが、今読むと「えっ、これで本格やるの?」と、当時とはまた違った受け止め方になっているだろう。登場人物が少なめなのも、読みやすい要因だと思う。
読了日:10月5日 著者:ヘレンマクロイ
怪盗ニック全仕事(2) (創元推理文庫)怪盗ニック全仕事(2) (創元推理文庫)感想
ホックの短編は安心して読める安定感がある。なので、だらだら読んでるだけでも充分楽しいが、怪盗ニックには「依頼者はなぜ価値がないものが欲しいのか」「ニックはどうやって盗むのか」などの謎解きポイントがいくつかあるので、本格ミステリ的にも楽しめる。なにもない部屋から盗めと言われる話や、何も盗むなと言われる話などの捻くれた作品が特に意外性が高くて良かった。ニックの仕事がスパイだと信じるグロリアとのサブストーリーも面白い。
読了日:10月5日 著者:エドワード・D・ホック
勝手に! 文庫解説 (集英社文庫)勝手に! 文庫解説 (集英社文庫)感想
解説の名手の北上さんが、頼まれてもないのに「面白いから」と勝手に書いてしまった「文庫解説」だけの本。仕事ではない分、魂がこもっており、どれも面白い。雑誌掲載は「ミステリマガジン」で出版は集英社文庫からだが、自社本に限ってないのが素晴らしい。
読了日:10月5日 著者:北上次郎
東京結合人間東京結合人間感想
男女がセックスではなく、一方の肛門から身体ごと入り込んで結合することによって生殖する世界。そこで突然変異で現れる「絶対に嘘がつけない結合人間」=「オネストマン」たちが集まった孤島で起こる連続殺人――異形の世界を構築し、そのルール内で本格ミステリをやる、という発想力と、その世界ならではの意外性をこれでもかと盛り込んだロジックは素晴らしい。部分的にイメージしにくい箇所もあり、もっとスッキリしていればなお良かったと思うが、ユニークな本格魂を持った若手作家の活躍には今後とも期待したい。
読了日:10月1日 著者:白井智之
赤い博物館赤い博物館感想
捜査資料や証拠を管理する「犯罪資料館」に飛ばされた寺田は、館長でキャリアの緋色冴子とともに、既に時効となった過去の事件の資料から、疑問に感じた事件を再捜査していく……という警察小説を装ってはいるが、まぎれもない本格ミステリの傑作短編集。ガチガチのロジックから全く予想外の真相が明かされる。その逆転の構図に鳥肌が立つ作品ばかりだ。本格ファンは絶対に読むべし。われらが大山誠一郎にハズレなし!
読了日:9月21日 著者:大山誠一郎
その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)感想
宗教団体で起こった集団自殺で唯一生き残った少女が見た「奇蹟」とは……事件が「奇蹟」であることを証明するために、論理的で意外性溢れる推理を次々に論破していく、という風変わりな多重推理もの。全編からそこはかとなく感じられる「講談社文三」テイストは、マニアにとっては面白くて仕方ないが、万人受けするか、と言われると微妙。私も再読してようやく本作の面白さが分かった気がする。読者を選ぶ作品世界だろう。
読了日:9月21日 著者:井上真偽
プリンス論 (新潮新書)プリンス論 (新潮新書)感想
マイケル・ジャクソンと並び称されるポップミュージック界の天才、プリンスの活動・功績を振り返った一冊。私自身、プリンスはあまり聴いてこなかったので、これを読んでもっと知りたくなったし、何よりも郷太さんがプリンスのことが本当に大好きで、その魅力をみんなに伝えたいんだ、という気負いが文章の端々から感じられる。そういえば、あのトレードマークだけの時代は、私も微妙と思ってましたw
読了日:9月21日 著者:西寺郷太
たのしいプロパガンダ (イースト新書Q)たのしいプロパガンダ (イースト新書Q)感想
映画、音楽、アニメなどの娯楽を使った国内外の実例を挙げ、一見それとは分かりにくいが確実に民衆をコントロールしていくプロパガンダを研究した本。我々も知らず知らずのうちに一定の方向に向かされることもあり得るのだという警鐘も鳴らしている。オウム真理教の情報操作の巧妙さなどが特に興味深かった。
読了日:9月21日 著者:辻田真佐憲
聖母聖母感想
今年後半のベスト級の傑作ミステリ。真相を知るとタイトルの意味の深さも分かる。ただ、正直言ってアンフェアすれすれ、限りなくアンフェアに近いトリックで、読み終えてから冷静になってみると「あれ?」ってなる部分があるのは否めない。ただ、衝撃度はダントツで素晴らしい。読むべし。
読了日:9月19日 著者:秋吉理香子
犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼感想
実は前作を全く評価しないクチなので、本作も眉唾で読み始めた。序盤は思った以上に面白くてページを繰る手が止まらなかったが、メインの誘拐ビジネスの展開でまた困ってしまった。犯人も捜査側も被害者側もみんな緊迫感がなくて、まるで誰にも感情移入できない。緩すぎるのだ。一気に読める面白さは持続しているものの、ミステリとしての完成度には甚だ疑問が残る。
読了日:9月18日 著者:雫井脩介
羊と鋼の森羊と鋼の森感想
高校時代の運命的な出会いから、一人前のピアノ調律師を目指す外村くんの話。一言でまとめるとそういう小説だが、宮下さんの作品世界に浸っていたくて、そのままずっとこの世界にいる錯覚を覚える。ピアノ調律師、という特殊な職業の奥深さも知れるし、ピアノを弾くシーンでは頭の中でその曲が響いたりするのだ。外村くんは決してまだ一人前ではないけれど、その後の彼の成長していく姿、そしてその周囲の人々のその後の姿も浮かんでくるようだ。
読了日:9月18日 著者:宮下奈都
戦場のコックたち戦場のコックたち感想
ノルマンディー上陸作戦に加わった米軍の特技兵(コック)として任務にあたるコール(キッド)が戦地で遭遇する謎の数々……。もの凄い作品を読んでしまった。帯にもある通り、戦場における「日常の謎」ものでもあるが、後半は戦争そのものが深く絡み合い、主要人物が戦死するなど、重苦しい空気になる。戦地ならではの謎があり、意外性溢れる真相があり、深い余韻が残る。戦争小説と本格ミステリが見事に融合した傑作と言えよう。
読了日:9月16日 著者:深緑野分
呪文呪文感想
寂れた商店街に現れたクレーマーに対し、ネット上での論争に完全勝利した図領たち。人が人を呼び、商店街は活況を呈しはじめたが……前半はあるある話で面白いが、後半になってくると、逆に恐ろしさが支配してくる。そしてそれも、最近の社会特有の「空気」を想起させるところがなお恐ろしい。現代社会に警鐘を鳴らしながらも、エンタメとして優れた小説だ。
読了日:9月13日 著者:星野智幸
大林宣彦の体験的仕事論 (PHP新書)大林宣彦の体験的仕事論 (PHP新書)感想
大林宣彦監督が、自らの監督人生を振り返りつつ、そこで得た哲学・仕事論を教えてくれる。特に第四章「いかに一緒に働く人の力を引き出すか」は、優れたチームリーダー論として、ビジネスパーソンにも必読だ。後半の対談も知られざるエピソード満載で面白い。
読了日:9月13日 著者:
有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。 (torch comics)有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。 (torch comics)感想
タイトル通りの本だが、よくまとめられており、感心してしまった。有名だけど未読の作品も多くて、こういう話だったのか、と、ざっと知れただけでも充分な収穫だ。多分、かなり詰め込んであるんだろうけれど。ドグラ・マグラは増量の16ページで、まあ仕方ないよね、と思いながらも、この要約は見事。本筋ではないが、プロフィールを見ると、若くして亡くなった作家が実に多いことに改めて気付かされる。
読了日:9月13日 著者:ドリヤス工場
新刊、刷り上がりました!1 (B's-LOG COMICS)新刊、刷り上がりました!1 (B's-LOG COMICS)感想
作家でも編集者でもなく、印刷所にスポットを当てた出版業界漫画。なかなか面白いが、ビーズログなのでBL臭が漂うのは仕方ないところか。とりあえず、『女子高生膝下100選』という写真集は、個人的に見てみたいw
読了日:9月10日 著者:藤峰式
満洲国を動かした謎の人脈 (新人物文庫)満洲国を動かした謎の人脈 (新人物文庫)感想
満洲国の歴史を、満州に関わった人物にスポットを当てて研究した本。現在文庫化が進んでいる船戸与一の「満州国演義」のサブテキストとして読んでみたが、作中にも登場する人物が多く登場するので参考になる。大本教出口王仁三郎も関わっていたなど、興味深い点もあった。
読了日:9月7日 著者:『歴史読本』編集部:佐野眞一(ノンフィクション作家)ほか21人
MasatoMasato
読了日:9月7日 著者:岩城けい
まるで天使のような (創元推理文庫)まるで天使のような (創元推理文庫)感想
リノで無一文になったクインは、迷い込んだ謎の新興宗教の修道女から、ある男の消息調査を依頼される……心理サスペンスの名作が復刊。私は初読だが、噂通りの傑作だった。「最後の一撃」ものと分かっていても、思いもよらぬ結末には驚かされる。そこに至るまでの物語が実に面白く、読ませるからこそ、ラストが効果的なのだと思う。ミラーはほとんど読んだことがないが、追いかけなければならないと感じた。
読了日:9月4日 著者:マーガレット・ミラー
愛国とレコード: 幻の大名古屋軍歌とアサヒ蓄音器商会 (ぐらもくらぶシリーズ)愛国とレコード: 幻の大名古屋軍歌とアサヒ蓄音器商会 (ぐらもくらぶシリーズ)感想
名古屋にあった「アサヒ蓄音機商会」が発表していた軍歌レコードを、その歌詞とともにカタログ形式で紹介した本。同じ著者の『日本の軍歌』『ふしぎな君が代』やタマフルの軍歌特集に触れてきたので、本書も楽しく読んだ。愛国的な空気は民間から発信されることを、この歴史が証明しているわけで、最近の時局を考えると、歴史は繰り返すのかも知れないという恐ろしさも感じる。
読了日:9月4日 著者:辻田真佐憲
事変の夜: 満州国演義二 (新潮文庫)事変の夜: 満州国演義二 (新潮文庫)感想
満州国演義」文庫化の2巻目。満州事変から満州国建国の直前までが描かれる。敷島四兄弟の立場が違うことにより、同じ歴史を多角的に見ることが出来るのがこのシリーズの特色だと思う。
読了日:9月2日 著者:船戸与一
謎の放課後 学校の七不思議 (角川文庫)謎の放課後 学校の七不思議 (角川文庫)感想
角川文庫オリジナルの学園ミステリ・アンソロジー直木賞作家でもある辻村深月さんを除けば、これから活躍していくであろう気鋭を揃えているのが新機軸。やっぱり辻村さんの「踊り場の花子」が一番安定感あって面白かったが、他の作品もそれぞれ楽しませてくれた。田丸雅智さんのショート・ショートの想像力にはまた唸らされた。深緑野分さんのラストの意外性もすごかったし、相沢沙呼さん、七尾与史さんも本格ミステリ度が高く、他の作品も読みたいと思った。アンソロジーが新しい作家を知る一助になるなら、その理想形だと思う。
読了日:8月31日 著者:
孤狼の血孤狼の血感想
絵に描いたような「ザ・悪徳警官」の班長・大上の下につき、反発しながらも徐々に影響を受けていく日岡。やがてヤクザたちの大きな抗争に巻き込まれていく……呉をモデルにした街(呉原)を舞台にしたハードボイルド。一気読みさせるサスペンスと、タイトルの真の意味が判明するラストに戦慄する。女性の手による小説というのが信じられないくらい、暴力的で骨太な小説だ。
読了日:8月30日 著者:柚月裕子
偽りの楽園(下) (新潮文庫)偽りの楽園(下) (新潮文庫)感想
スウェーデンの村で起こった出来事。嘘をついているのは、母か、父か? 前半、というか全体の3分の2くらいまでは、ダニエルと母親の語りが頻繁に交替するので、テンポ感はあるものの、物語に入り込み難かったのだが、それが終わってからの展開は一気だった。衝撃の真相を経て、後味が悪いような、いいような、なんとも言えない読後感が残る。
読了日:8月30日 著者:トム・ロブ・スミス
偽りの楽園(上) (新潮文庫)偽りの楽園(上) (新潮文庫)
読了日:8月30日 著者:トム・ロブ・スミス
エジプト十字架の秘密 (角川文庫)エジプト十字架の秘密 (角川文庫)感想
EQの国名シリーズの中でも特に人気と評価の高い作品。例の手かがりから全ての謎が解かれる過程は何度読んでも素晴らしいが、変な宗教とかヌーディストとか、広い範囲が舞台になっている点など、読者を飽きさせない工夫もいろいろ入った作品なんだなあと改めて感じた。
読了日:8月26日 著者:エラリー・クイーン
放送中の死 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)放送中の死 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)感想
ラジオドラマの放送中に殺される役だった俳優が、その時本当に殺されていた……。アイデアは面白いし、作者は実際にBBCのラジオドラマに関わった人なので、リアリティは感じられるが、プロのミステリ作家ではないため、全体的に盛り上がりに欠ける。放送中に死んだシーンをリアルタイムで描いてないので、サスペンス性もイマイチ。ただ、解決編での推理はいかにも黄金時代のミステリの趣がある。余計なことだが、解説の森英俊さんが最近はまったアイドルグループって、誰なんでしょうか?
読了日:8月26日 著者:ヴァルギールグッド,ホルトマーヴェル
ばらかもん(3)(ガンガンコミックスONLINE)ばらかもん(3)(ガンガンコミックスONLINE)感想
バイトの子が貸してくれたコミックを3巻まで。停滞気味な現状を打破するため、五島列島に本拠地を移した書道家と、島の人々との交流を描く。とてもいい作品世界だ。
読了日:8月24日 著者:ヨシノサツキ
ばらかもん 2 (ガンガンコミックスONLINE)ばらかもん 2 (ガンガンコミックスONLINE)
読了日:8月24日 著者:ヨシノサツキ
ばらかもん 1 (ガンガンコミックスONLINE)ばらかもん 1 (ガンガンコミックスONLINE)
読了日:8月24日 著者:ヨシノサツキ
ダンジョン飯 2巻 (ビームコミックス)ダンジョン飯 2巻 (ビームコミックス)感想
1巻に比べて、登場する食事が遥かに美味しそうになってきたことは大きな前進だ。まさかゴーレムを畑に利用するとはw 徐々にキャラクターの面白さも増しているので、今後の展開も楽しみになってきた。
読了日:8月24日 著者:九井諒子
タモリと戦後ニッポン (講談社現代新書)タモリと戦後ニッポン (講談社現代新書)

2016年1月1日に「青空文庫」から公開される江戸川乱歩作品はこれだ!

まもなく2015年も終わりますね。しみじみ。
そしてあっという間に新年、2016年がやってきます。
そして私が毎年、元日の更新を楽しみにしているサイトがあります。青空文庫です。
青空文庫 Aozora Bunko


ご存知、著作権フリーになった作家の作品の電子化をすすめ、公開しているサイトです。パソコンはもちろんのこと、スマホ等でもフリーのアプリで読むことができます。


ところが今年、TPPが大筋合意したことによって、著作権保護期間も変わることになったことをご存知でしょうか。なぜか輸出入品関連の報道しかないのであまり知られていませんが、著作権の保護期間が今までの「作者の死後50年」から「作者の死後70年」に延長してしまったのです。これはもしや、来年から著作権フリーになる作家に影響するのでは? と不安で仕方ありませんでした。


でも安心してください。来年はちゃんとフリーになりますよ。


著作権保護期間の延長は、いきなりすぐ始まるのではなく、いろんな準備期間を経てから適用されるようです。その準備には1〜2年程度かかると言われており、2016年についてはとりあえず大丈夫。しかも著作権保護の延長が施行されても、その時点で既にフリーになっている作家まで遡っての適用はなさそうなので(まだ予断を許さないようですが、法律的には不遡及が一般的のようです)、フリーになったけどまた保護されて、公開できなくなる、ということもなさそうです。よかったですね。


(ただ、著作権保護延長が施行されてから確実に死後50年を迎える作家の作品については、残念ながらまだ20年待たなければいけなくなりましたが……。直近でその影響を受けそうな著名作家は、例えば三島由紀夫川端康成などです)


というわけで2016年は、1965年に死去した作家の作品がフリーになり、青空文庫でも読めるようになります。来年フリーになる作家では超大物が二人いるのですよ。江戸川乱歩谷崎潤一郎です。


さて、青空文庫では「作業中の作品」の一覧を公開しており、間もなく著作権フリーになる作家の作品についての進行状況も分かるようになっています。早速確認してみると、江戸川乱歩は76作品、谷崎潤一郎は36作品が作業中とのこと。さらに見ると、作品ごとの進行状況も分かり、どの作品が校了して公開待ちかまで分かります。
乱歩の項目では、

押絵と旅する男」「怪奇四十面相」「怪人と少年探偵」「怪人二十面相」「心理試験」「随筆銭形平次」「D坂の殺人事件」「二銭銅貨」「日記帳」「人間椅子」「パノラマ島奇譚」「ふしぎな人」「指輪」

校了すみ。栄えある元日公開作品は「二銭銅貨」になるようです。
作業中 作家別作品一覧:江戸川 乱歩


谷崎潤一郎は「陰翳礼讃」「鍵」「刺青」「春琴抄」「吉野葛」などが校了すみ、春琴抄」が元日公開になります。
ミステリファン的には、大坪砂男も楽しみですね。4作品が作業中で、「浴槽」が元日公開になるようです。


補足ですが、著作権フリーになったらタダで読めるから、書店的にはダメージでは? と思われがちですが、案外そうでもないと思います。保護されていない分、出版社にとっても出しやすくなり、読者に届きやすくなります。サン=テグジュペリ星の王子さま』の著作権が切れてから、たくさんの出版社から様々な翻訳者の手で翻訳・出版されたことも記憶に新しいところです。
乱歩についても、2016年2月に文春文庫から乱歩の傑作選が出るようですし、今後も出版機会が増えると期待しています。(逆に、以前記事にも書いたリブレ出版版は、よく保護期間内で出版許可をもらったものだと感心してしまいますが)

ハヤカワ文庫補完計画刊行リスト(2015年11月現在)

皆さんは「ハヤカワ文庫補完計画」の存在にお気づきでしょうか?
海外ミステリ、SFファンなら気づかれていると思いますが、早川書房は2015年が創立70周年とのことで、それを記念した企画として、早川書房が今まで刊行した本の中から名作・傑作70点を新版や新訳、復刊の形で刊行している企画シリーズです。
早川書房創立70周年文庫企画 ハヤカワ文庫補完計画、始動。
補完計画に該当する作品には、刊行時のオビに番号が振られているのですが、このリストを一覧にしたページがハヤカワさんのサイト内にもなくて、どれが「補完計画」作品なのかがイマイチ把握できません。
気になったので、勝手に整理してみました


ただ、これが調べようとすると本当に分からなくて、現物でもオビくらいしか情報がないのですよ。作成に当たり、「ハヤカワ文庫補完計画全レビュー」をされている冬木糸一さんのブログやツイッター投稿( @huyukiitoichi )を参考にさせていただきました。ありがとうございます。
基本読書
また、 @mori0099 さんにもご教示いただきました。ありがとうございます。

というわけで、2015年11月時点での「ハヤカワ文庫補完計画」作品リストです。

1.アルジャーノンに花束を(新版) ダニエル・キイス
2.ソラリス スタニスワフ・レム
3,4.死者の代弁者(新訳版)上下 オースン・スコット・カード
5,6.シャーロック・ホームズの冒険(新版)上下 アーサー・コナン・ドイル
7.ファイト・クラブ(新版) チャック・パラニューク
8.レナードの朝(新版) オリヴァー・サックス
9.伝道の書に捧げる薔薇 ロジャー・ゼラズニイ
10.パーマー・エルドリッチの三つの聖痕 フィリップ・K・ディック
11.クローム襲撃 ウィリアム・ギブスン
12.はだかの太陽(新訳版) アイザック・アシモフ
13.特別料理 スタンリイ・エリン
14,15.24人のビリー・ミリガン(新版) 上下 ダニエル・キイス
16.タイム・シップ(新版) スティーヴン・バクスター
17.歌おう、感電するほどの喜びを!(新版) レイ・ブラッドベリ
18.アデスタを吹く冷たい風 トマス・フラナガン
19.ママは何でも知っている ジェイムズ・ヤッフェ
20,21、23,24,26.大日本帝国の興亡(新版)1〜5 ジョン・トーランド
22.来訪者(新訳版) ロアルド・ダール
25.逆光の夏 ジョン・ヴァーリイ傑作選 ジョン・ヴァーリイ
27.海外SFハンドブック 早川書房編集部編
28.海外ミステリ・ハンドブック 早川書房編集部編
29.九尾の猫(新訳版) エラリイ・クイーン
30.ルパン対ホームズ モーリス・ルブラン
31.密造人の娘(新版) マーガレット・マロン
32.トレインスポッティング アーヴィン・ウェルシュ
33,4.双生児 上下 クリストファー・プリースト
35.復讐者たち(新版) マイケル・バー=ゾウハー
36.ブラッド・ミュージック グレッグ・ベア
37.野獣死すべし ニコラス・ブレイク
38,39.リトル・ドラマー・ガール 上下 ジョン・ル・カレ
40.魔法がいっぱい! ライマン・フランク・ボーム
41.魔術師を探せ!(新訳版) ランドル・ギャレット
42,43.ムハマド・ユヌス自伝 上下 ムハマド・ユヌス&アラン・ジョリ
44.宇宙への序曲(新訳版) アーサー・C・クラーク
45.宇宙の戦士(新訳版) ロバート・A・ハインライン
46.黄色い部屋の秘密(新訳版) ガストン・ルルー
47、48.レッド・ドラゴン(新訳版)上下 トマス・ハリス
49.世界の誕生日 アーシュラ・K・ル・グィン

調べていて、一番の不意打ちだったのは、『大日本帝国の興亡』全5巻が連番になっていないことでした。まさかの飛び番だったとは……。

ミステリマニア的に驚いたのは、『特別料理』『アデスタを吹く冷たい風』『ママは何でも知っている』などの、今まで文庫化されなかった作品が、この流れに紛れてしれっと文庫化してることですね。いや、嬉しいんですけどね。っていうか、ハヤカワさん、やればできるじゃん!(上から目線発言ですみません)

特別料理 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

特別料理 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

アデスタを吹く冷たい風 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

アデスタを吹く冷たい風 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ママは何でも知っている (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ママは何でも知っている (ハヤカワ・ミステリ文庫)

また、レアアイテムとして古書の価値が高かった『魔術師を探せ!』の新訳も嬉しいところです。本当は、よりレアな『魔術師が多すぎる』を出して欲しかったところですが、元々の発表順が『探せ!』の方が先だったらしいのです。『探せ!』が売れると『多すぎる』も復刊されると思うので、皆さん、『魔術師を探せ!』を買いましょう!
魔術師を探せ! 〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

魔術師を探せ! 〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

さて、ハヤカワのサイトでは現在、刊行予定リストが第二弾まで公開されておりますが、現時点で未刊行なのは、以下の作品です。

デューン砂の惑星(新訳版) 上下 フランク・ハーバード
ナイト・マネジャー 上下 ジョン・ル・カレ
カエアンの聖衣(新訳版) バリントン・J・ベイリー
星々の宝冠(仮題) ジェイムズ・ディプトリー・ジュニア
人間の再発見〈人類補完機構〉全短編 コードウエイナー・スミス
中継ステーション(新訳版) クリフォード・D・シマック
ブラウン神父の童心(新訳版) G・K・チェスタトン
象牙色の嘲笑(新訳版) ロス・マクドナルド
アラスカ戦線(新版) ハンス・オットー・マイスナー
最初の刑事 ケイト・サマースケイル
キャッチ=22(新版) 上下 ジョーゼフ・ヘラー

田口俊樹さん訳の『ブラウン神父の童心』や、『キャッチ=22』、『象牙色の嘲笑』が楽しみです。


ここまでが全部刊行されると、63作品。
残る7作品が気になるところですね。